ウィチタ (重巡洋艦)

重巡洋艦ウィチタ (USS Wichita, CA-45)

ウィチタは、アメリカ海軍が建造した重巡洋艦であり、その艦名はカンザス州のウィチタ市に由来します。同型艦は存在せず、独自の特徴を持つ艦として知られています。

設計

当初、ウィチタはニューオーリンズ級重巡洋艦の8番艦として計画されましたが、後にブルックリン級軽巡洋艦の設計を基に、ニューオーリンズ級の兵装を搭載する形に変更されました。この設計は、戦前の巡洋艦の発展形であり、ブルックリン級との共通点も多くありました。しかし、ウィチタは新型の8インチ砲塔と、対空用のMk 12 5インチ砲を装備しており、特に5インチ砲の配置は画期的でした。砲塔内に4門、露天に4門の計8門が装備され、砲塔内の2門は主砲塔直後に配置され、航空戦を考慮した設計は当時としては先進的でした。

また、機関には新型の高温高圧缶が採用され、艦尾には航空機格納庫とカタパルトが設置されました。これらの兵装や航空設備の配置は、後のアメリカ海軍巡洋艦の設計に大きな影響を与え、特にウィチタは、後に建造されたボルチモア級重巡洋艦の原型となりました。

艦歴

ウィチタは1935年10月28日にフィラデルフィア海軍造船所で起工されました。その情報はロンドン海軍軍縮条約に基づき、大日本帝国にも通告されました。1937年11月16日に進水し、1939年2月16日に初代艦長タデウス・A・トムソン大佐の指揮下で就役しました。

第二次世界大戦

就役後、ウィチタはメキシコ湾での訓練航海を経て、テキサス州ヒューストンでの記念式典に参加しました。第二次世界大戦が勃発すると、ウィチタは大西洋艦隊に配属され、哨戒任務に従事しました。カリブ海での活動を経て、1940年には南アメリカ水域での「旗幟を鮮明にする」任務も担当しました。また、1941年にはアイスランドへのアメリカ軍進駐作戦にも参加しました。

1942年1月、アイスランドで暴風雨により損傷を受けましたが、修理後、ヨーロッパ方面での活動に参加しました。北極海を航行する輸送船団の護衛任務にも従事し、PQ17船団の護衛ではドイツ軍の攻撃に晒されました。1942年11月には、トーチ作戦（北アフリカ上陸作戦）に参加し、カサブランカ沖での戦闘でヴィシー政権軍と交戦しました。

1943年からは太平洋戦線に転戦し、ガダルカナル島の戦いの最終段階に参加しました。レンネル島沖海戦では、日本の陸攻隊の攻撃を受けました。その後、アリューシャン方面での作戦にも従事しました。1944年には、マーシャル諸島、トラック諸島、パラオ、マリアナ諸島、フィリピン、沖縄など、太平洋各地での戦闘に参加しました。特にマリアナ沖海戦では、効果的な対空射撃で日本軍機を多数撃墜しました。レイテ沖海戦では、千代田と初月の撃沈に貢献しました。10月末には神風特攻隊の攻撃も受けましたが、大きな損害は免れました。

1945年、沖縄戦では艦砲射撃を行い、上陸部隊を支援しました。また、特攻機の攻撃を受けるも、撃墜に成功しています。ウィチタは第二次世界大戦中に13の従軍星章を授与されました。

戦後

終戦後、ウィチタは日本占領部隊に加わり、長崎や佐世保で活動しました。日本軍に捕らえられていた戦時捕虜を本国に送還する任務も行いました。1946年1月にはマジック・カーペット作戦に参加し、帰還兵を輸送しました。同年7月15日に予備役となり、1947年2月3日に退役しました。1959年3月1日に除籍され、同年8月14日にスクラップとして売却されました。

ウィチタは、その独特な設計と数々の戦闘での活躍から、アメリカ海軍史において重要な艦の一つとして記憶されています。第二次世界大戦では、太平洋と大西洋の両方でその存在感を示し、多くの戦場で重要な役割を果たしました。

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