ウィリアム・ローズクランズ

ウィリアム・スターク・ローズクランズ：多才な軍人、発明家、政治家の生涯

ウィリアム・スターク・ローズクランズ（1819年9月6日 - 1898年3月11日）は、アメリカの軍人、発明家、実業家、外交官、政治家として多岐にわたる分野で活躍した人物です。特に、南北戦争においては北軍の将軍として名を知られ、西部戦線での重要な戦いを指揮しました。

生い立ちと初期の経歴

ローズクランズは、オハイオ州デラウェア郡で生まれ、曽祖父にアメリカ独立宣言の署名者がいたという家系でした。1842年に陸軍士官学校を卒業後、工兵技師としてキャリアをスタートさせ、要塞の建設や講師を務めました。1854年には陸軍を退役し、土木業界へと転身。鉱業経営で成功を収める傍ら、石鹸製造法の改良など、数々の発明も行いました。

南北戦争での活躍

1859年に石油ランプの爆発で大火傷を負ったローズクランズでしたが、快復後、南北戦争が勃発すると、ジョージ・マクレラン少将の副官として軍務に復帰しました。大佐に昇進し、第23オハイオ歩兵連隊を指揮した際には、後の大統領となるラザフォード・ヘイズやウィリアム・マッキンリーも部下にいました。ウェストバージニア方面作戦では、その作戦能力が発揮され、北軍の勝利に貢献しました。

その後、ローズクランズは西部戦線に配属され、イウカやコリンスといった重要な戦いで指揮を執りました。特に、第二次コリンスの戦いでは、アール・ヴァン・ドーン率いる南軍を破り、その名を轟かせました。しかし、追撃の遅さから、ユリシーズ・グラント少将からは、慎重すぎるという批判を受けることになります。それでも、ローズクランズは北部の新聞では英雄として称えられました。

1862年10月には、第14軍団（後のカンバーランド軍）の指揮官に任命され、少将に昇進しました。ストーンズリバーの戦いでは、ブラクストン・ブラッグ将軍率いる南軍を破り、北軍の士気を大いに高めました。エイブラハム・リンカーン大統領からもその功績を称えられ、テネシー州中部における南軍の脅威を無力化することに成功しました。

ローズクランズは、その人柄から「年寄りのロージー」という愛称で親しまれ、部下からの信頼も厚かったです。カトリック教徒であり、宗教的な議論を好む一面もありましたが、時には激しい怒りを見せることもありました。

チカマウガの戦いと解任

タラホーマ方面作戦では見事な勝利を収めたローズクランズでしたが、チカマウガの戦いでは、その慎重な性格と軍隊を細かく管理する傾向が裏目に出て、南軍に大敗を喫してしまいます。この敗戦を受け、ローズクランズはチャタヌーガに撤退し、ブラッグ軍に包囲されることになります。その結果、ユリシーズ・グラントが西部全軍の指揮官となると、ローズクランズはカンバーランド軍指揮官から解任され、後任にはジョージ・ヘンリー・トーマスが就任しました。

ミズーリ方面軍とその後

解任後、ローズクランズはミズーリ方面軍の指揮を執り、スターリング・プライスの襲撃に対抗しました。また、1864年の共和党全国大会では、エイブラハム・リンカーンの副大統領候補として打診されるも、最終的には実現しませんでした。

1865年にはストーンズリバーの戦いでの功績により、少将への名誉昇進を果たし、1867年には陸軍を退役しました。

外交官、政治家としての活動と晩年

1868年から1869年まで、ローズクランズは駐メキシコ大使を務めましたが、大統領となったグラントによって交代させられました。その後、鉱山経営に復帰し、カリフォルニア州選出の下院議員を1881年から1885年まで務め、財務省登録官にも任命されました。

1898年、ローズクランズはカリフォルニア州レドンドビーチで亡くなり、アーリントン国立墓地に埋葬されました。カリフォルニア州サンディエゴのフォート・ローズクランズ国立墓地や、ロサンゼルス郡のローズクランズ・ブールバールは、彼の名にちなんで名付けられました。

ローズクランズの生涯は、軍人としての輝かしい功績と、その後の多岐にわたる分野での活動によって彩られています。彼の慎重かつ大胆な作戦は、しばしば議論の対象となりましたが、その功績はアメリカの歴史に深く刻まれています。

フィクション

ハリー・タートルドーブの歴史小説『How Few Remain』に登場人物として描かれています。

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