ウィリアム・ヴァーノン・ハーコート

サー・ウィリアム・ヴァーノン・ハーコート：ヴィクトリア朝の自由党政治家

サー・ウィリアム・ジョージ・グランヴィル・ヴェナブルズ・ヴァーノン・ハーコート（Sir William George Granville Venables Vernon Harcourt, 1827年10月14日 - 1904年10月1日）は、イギリスの政治家であり、ヴィクトリア朝後期の自由党政権において重要な役割を果たしました。

生涯と政治経歴

1827年、オックスフォードに生まれたハーコートは、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジを卒業後、弁護士として活動。1869年にはケンブリッジ大学の国際法教授に就任し、1873年には法務次長に任命され、ナイトの称号を得ました。

1868年、オックスフォード選挙区から自由党の庶民院議員に選出され、政界入りを果たします。その後、ダービー選挙区、ウェスト・マンマスシャー選挙区からも選出され、庶民院議員として活躍しました。

グラッドストン内閣での活躍と離反

ハーコートは、第2次グラッドストン内閣で内務大臣に就任し、1880年の狩猟法、1881年のアイルランド武器法、1883年の爆発物法の制定に貢献しました。当初はグラッドストンの忠実な閣僚として知られていましたが、次第に意見の相違が生まれます。特に、第4次グラッドストン内閣では、アイルランド自治法案をめぐるグラッドストンの姿勢に反発し、対立を深めました。

ハーコートは「小英国主義」の立場から、植民地政策にも慎重な姿勢を示しました。ウガンダ植民地化を推進するローズベリー伯爵と対立し、海軍増強にも反対しました。しかし、最終的には海軍予算増額を容認し、グラッドストンとの決定的な亀裂を生むことになります。

自由党党首として

グラッドストンの辞任後、ハーコートは自由党庶民院院内総務に就任。ローズベリー伯爵の党首辞任後には、党首を兼任することになります。しかし、南アフリカ情勢をめぐり、自由党は「小英国主義派」と「自由帝国主義派」に分裂。ハーコートは党内をまとめきれず、1898年に党首を辞任しました。

死去

1904年10月1日、ハーコートはナンハムで生涯を閉じました。

栄典

1866年：勅選弁護士（QC）
1873年：ナイト
1880年：枢密顧問官（PC）
副統監（DL）

家族

最初の妻マリア・テレサ・リスターとの間に2子、2番目の妻エリザベス・モトリーとの間に1子を儲けました。次男ルイスは、初代ハーコート子爵となっています。

評価

サー・ウィリアム・ヴァーノン・ハーコートは、ヴィクトリア朝後期のイギリス政治において、重要な役割を果たした人物です。自由党の有力政治家として、内政・外交の両面で活躍しましたが、その政治姿勢はしばしば議論を呼びました。特に、グラッドストンとの関係や、自由党の分裂を招いた責任など、評価は分かれています。

参考文献

神川信彦、君塚直隆（解題）『グラッドストン 政治における使命感』吉田書店、2011年。ISBN 978-4905497028。
坂井秀夫『政治指導の歴史的研究 近代イギリスを中心として』創文社、1967年。ASIN B000JA626W。
中村祐吉『イギリス政変記 アスキス内閣の悲劇』集英社、1978年。ASIN B000J8P5LC。
秦郁彦 編『世界諸国の組織・制度・人事 1840―2000』東京大学出版会、2001年。ISBN 978-4130301220。

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