ウィルミントンの戦い

ウィルミントンの戦いは、南北戦争の終結が近づいた1865年2月11日から22日にかけて、主にノースカロライナ州ウィルミントン市とその周辺で行われた戦闘です。この戦いは、北軍によるウィルミントン市とその周辺の南軍陣地制圧を目的としていました。1月に第二次フィッシャー砦の戦いで北軍が勝利したことで、ウィルミントン市は南軍の主要な港としての役割を終え、北軍の支配下に置かれることになりました。

背景

フィッシャー砦の陥落は、ウィルミントン市における封鎖突破を不可能にし、南軍は大西洋岸における重要な港を失いました。南軍はケープフェア川河口付近の防御施設を放棄せざるを得なくなり、重火器も使用不能にするか、置き去りにせざるを得ませんでした。フィッシャー砦での敗北は南軍兵士の士気を低下させ、脱走兵が増加する一方で、残った兵士たちは高い士気を維持していたと報告されています。

ブラクストン・ブラッグ将軍がウィルミントン市の防衛を指揮し、その野戦軍はロバート・F・ホーク少将の師団と、少数の砲兵隊、州兵で構成されていました。ホークはケープフェア川東岸のシュガーローフで3個旅団を指揮し、残りの1個旅団は川西岸のアンダーソン砦を守備していました。ブラッグは物資を移動させ、海岸にいる北軍がウィリアム・シャーマン少将の軍隊を補強するのを阻止する目的で、ウィルミントンに留まっていました。

北軍の総司令官ユリシーズ・グラント中将は、ゴールズボロへの進軍基地としてウィルミントンを使用したいと考えていました。海岸からゴールズボロまでの鉄道は、両カロライナ州を北上中のシャーマン軍の補給路として活用できると見込まれていました。1865年2月、北軍第23軍団が到着し、アルフレッド・H・テリー少将指揮下のフィッシャー砦遠征軍団を強化。ジョン・マカリスター・スコフィールドが全軍の指揮を執り、2月中旬にウィルミントン市への進軍を開始しました。

戦闘

シュガーローフ前線

ウィルミントンの戦いは、ケープフェア川沿いの3つの小規模な戦闘で構成されています。2月11日、スコフィールド軍はアルフレッド・テリーの軍団でホークのシュガーローフ前線を攻撃しました。戦闘は、北軍砲艦による艦砲射撃で始まり、その後テリー軍が前進を開始。しかし、左翼が川沿いの湿地に阻まれました。午後遅くには南軍の散兵線を突破したものの、防御が堅固なため正面攻撃は困難と判断。スコフィールドは川の西岸からの攻略を決断しました。翌日、第23軍団のジェイコブ・D・コックス少将の師団を川の西岸に渡らせ、アンダーソン砦を攻略させました。

アンダーソン砦

デイビッド・ディクソン・ポーター海軍少将の砲艦がアンダーソン砦を砲撃し、大砲12門を全て沈黙させました。北軍は、ポーターの砲艦を前進させるために、南軍の機雷を爆破させる目的で偽装大砲を製作しました。クッシングもポーターもこの策略が成功したことに喜びましたが、南軍の報告書では守備隊が偽装を見破っていたとされています。一方、コックス隊は川の西岸から砦に進軍を開始。トマス・J・ヘンダーソン大佐とオーランド・ムーア大佐の旅団を正面から、ジョン・S・ケイスメント大佐とオスカー・スタール大佐の旅団を側面から攻撃させました。ケイスメントとスタールの部隊は南軍騎兵隊を撃退。砦の指揮官ジョンソン・ハーグッド准将は北軍の動きを察知し、タウン・クリークまで後退しました。ヘンダーソンの旅団が攻撃を開始すると、砦は容易に陥落し、南軍兵士が捕虜になりました。

タウン・クリーク

コックス隊はハーグッド隊を追撃し、2月19日にタウン・クリークの前線で追いつきました。一方、ホークの師団はウィルミントン市の南に後退し、テリーは慎重に後を追っていました。エイムズの師団がコックスの師団と共に川の西岸にいたため、テリーの師団はホークの師団より兵力が少なかったのです。そのため、エイムズの師団が再び川を渡ってテリーの部隊と合流。ポーターの艦隊は川の機雷の除去を開始していました。翌日、テリー隊は前進を再開し、ホークの新しい防衛線に遭遇しました。テリーは、ホークが動かないことを確認すると、塹壕掘りを開始。北軍砲艦は南軍の砲台の位置を確認しました。ハーグッド隊はタウン・クリークにかかる唯一の橋を燃やして、コックス隊の進軍を遅らせ、クリークの北岸で塹壕を構築しました。コックスは包囲作戦を続行しようとしましたが、ハーグッド隊がアンダーソン砦から退却したため、それは不可能となりました。2月20日、コックス隊は川で平底船を発見し、それを使って3個旅団を渡らせました。その間、陽動作戦として残りの旅団がハーグッド隊と小競り合いをしていました。ハーグッドは北軍が側面に回り込もうとしている動きを感知し、ウィルミントンまで後退することを決定。退却を援護するため、2個連隊を残しました。北軍が湿地帯を抜けて側面を攻撃すると、南軍の2個連隊は潰走し、375名の捕虜と大砲2門を捕獲しました。翌日、コックスは破壊された橋を再建し、スコフィールド隊の砲兵隊がクリークを渡ると、ウィルミントン市が砲撃範囲内に入りました。ブラッグ将軍は事態の切迫を悟り、市の放棄を命じました。2月21日、コックスの師団は市に向かって行軍を続けましたが、ブランズウィック川の橋が破壊されていたため遅延、また南軍騎兵隊の攻撃も受けました。一方、ホークの師団はテリー部隊を牽制し続けていました。ブラッグは21日にウィルミントン市にいた北軍の捕虜を脱出させ、軍事的に価値のあるものは全て持ち出し、綿花やタバコを焼却させ、倉庫や鋳造所、造船所も焼き払いました。ブラッグは2月22日午前1時に部隊を撤退させ、コックスの師団が午前8時過ぎに、テリー隊がその1時間後に市内に入りました。

戦闘後

ウィルミントンの戦いの結果、南軍は大西洋岸に残されていた最後の港を失いました。ウィルミントン港は封鎖突破の主要港であり、タバコ、綿花などの物資をイギリス、バハマ、バミューダなどへ運んでいました。北バージニア軍への補給物資の多くはウィルミントン経由でした。この港の閉鎖は北軍の海岸封鎖を完成させ、南軍は代わりとなる大西洋岸の港を見つけることができませんでした。ブラッグはウィルミントンでの敗北について南軍の新聞から厳しく批判されました。連合国議会の議員もジェファーソン・デイヴィス大統領を批判し、辞任を要求しました。
ブラッグ軍はウィルミントンからゴールズボロへ撤退し、そこでジョセフ・ジョンストン将軍の部隊と合流しました。北軍はウィルミントンを占領したことで、シャーマン軍への補給基地を確保し、海への供給線を確立しました。スコフィールドは、南軍が市の近くの鉄道を破壊していたため、その修復に時間を費やしました。シャーマン軍に送られる物資は、ウィルミントンで保釈された捕虜や、市内で生活する市民の支援にも使われました。スコフィールド隊はオハイオ軍に再編され、ウィルミントンから内陸に進み、ファイエットビル付近でシャーマン軍に合流しました。

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