ウィレム・ドロステ

ウィレム・ドロステ：レンブラントの才能ある弟子

ウィレム・ドロステ（1633年4月19日洗礼 - 1659年2月25日埋葬）は、17世紀オランダの画家で、巨匠レンブラントの弟子として知られています。しかし、20代半ばで早逝したため、彼の作品として確証されているものは非常に少なく、その生涯は謎に包まれています。

生涯

ドロステはアムステルダムで生まれたと推測されていますが、詳しい出生地や生い立ちについては不明な点が多く残されています。1650年頃にはレンブラントの弟子となり、歴史画、宗教画、肖像画など、幅広いジャンルの作品を手掛けました。師であるレンブラントとの関係は非常に緊密で、作品にもその影響が見られます。

1654年には、旧約聖書に登場する女性「バテシバ」を題材にした作品を描いています。同時期にはレンブラントも同じ主題で作品を制作しており、両作品は現在ルーヴル美術館に所蔵されています。

1655年までアムステルダムで活動した後、ドロステはイタリアへ旅立ちます。ローマやヴェネツィアを訪れ、ドイツ人画家ヨハン・カール・ロトと共同で『4福音宣明者』のシリーズを制作したと伝えられています。しかし、この作品は現存していません。ドロステは1659年にヴェネツィアで亡くなり、その短い生涯を閉じました。

作品と評価

ドロステの作品数は非常に限られていますが、その画力は高く評価されています。特に、レンブラントの影響を受けながらも独自のスタイルを確立しようとしていたことが、残された作品から窺えます。対照的に、レンブラントの作品は油彩画だけで2000点以上確認されていますが、その多くはサインがなく、近年ではドロステをはじめとする弟子や関係者の作品ではないかという疑念も提起されています。

ドロステの作品として知られるものの中には、長年レンブラントの作とされていたものが多くあります。例えば、1654年に描かれた『本を持つ若い女性の肖像』は、300年以上にわたりレンブラントの作品として扱われていました。また、『ポーランドの騎手』も、レンブラントの作品として有名でしたが、近年ではドロステの作品である可能性が指摘されています。これらの事実は、ドロステの画力が非常に高く、レンブラント作品と見分けがつかないほどであったことを物語っています。

主な作品

以下は、ドロステの主な作品です。作品の多くは、聖書を題材としたものや肖像画です。

1651: 『ベツレヘムに向かうルツとナオミ』 - アシュモレアン博物館（オックスフォード）
1652: 『自画像』
1653: 『男性の肖像』 - メトロポリタン美術館（ニューヨーク）
1653: 『女性の肖像』 - ブレディウス美術館（ハーグ）
1653: 『哲学者』 - ナショナル・ギャラリー（ワシントンD.C.）
c.1654: 『若い女性の肖像』 - ウォレス・コレクション（ロンドン）
1654:『本を持つ若い女性の肖像』 - ナショナル・ギャラリー（ロンドン）
1654: 『赤いベレー帽をかぶった男性の肖像』 - David Findlay Galleries（ニューヨーク）
1654: 『ダビデ王の手紙を持つバテシバ』 - ルーヴル美術館（パリ）
1655: 『無慈悲な家来』 - ウォレス・コレクション
1655: 『フルート奏者』 - 私蔵（ドイツ）
1655: 『大きなつばのある帽子をかぶった男性』- アイルランド国立美術館（ダブリン）
c.1656: 『フルートを持つ若者』 - 私蔵
c.1657: 『子供を教える老女』 - エルミタージュ美術館（サンクトペテルブルク）
c.1658: 『リコーダーを持つ少年』 - パラティーナ美術館（フィレンツェ）
c.1659: 『メルクリウスとアルゴス』 - アルテ・マイスター絵画館（ドレスデン）
1659: 『聖マタイと天使』 - ノースカロライナ美術館（ローリー）
c.1659: 『ハガルとイシュマエルを追放するアブラハム』 - ギルフォード大学コレクション（グリーンズボロ）
c.1650: 『福音宣明者ヨハネの扮する自画像』 - Bader Collection（ミルウォーキー）

まとめ

ウィレム・ドロステは、レンブラントの弟子として才能を発揮しながらも、若くしてこの世を去ったため、作品数は少ない画家です。しかし、彼の作品は師のレンブラントに匹敵するほどの高い画力を持つと評価され、近年では作品の再評価が進んでいます。レンブラントの作品とされていたものがドロステの作品である可能性が指摘されるなど、今後の研究によって、彼の知られざる側面が明らかになることが期待されています。


参照

Seymour Slive, Dutch Painting, 1600-1800, Yale UP, 1995, ISBN 0300074514
Jonathan Bikker (2006). Willem Drost: A Rembrandt Pupil in Amsterdam and Venice*. Yale University Press. ISBN 0-300-10581-9

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