ウィン・モリス

ウィン・モリス（Wyn Morris, 1929年2月14日 - 2010年2月23日）は、ウェールズ出身の著名な指揮者です。彼の音楽キャリアは、指揮者としての卓越した才能と、合唱音楽への深い愛情によって彩られています。

モリスは、モンマスシャーのトレレックで生まれ、音楽の道を志し、ロンドンの王立音楽院で学びました。その後、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院でイーゴリ・マルケヴィチに師事し、指揮者としての技術と音楽性を磨きました。1957年には、自らウェールズ交響楽団を創設し、その音楽監督に就任。同年には、タングルウッド音楽祭でクーセヴィツキー賞を受賞し、国際的な注目を集めました。さらに、ジョージ・セルに見出され、クリーヴランド室内交響楽団とオルフェウス合唱団の指揮を任されるなど、若くしてその才能が開花しました。

1960年にイギリスへ帰国したモリスは、ウェールズ・ナショナル・アイステズボドの音楽監督を1962年まで務め、ヨーロッパ最大級の文化祭を牽引しました。1963年には、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してロンドンデビューを飾り、翌年には王立音楽院の研究員（フェロー）となるなど、その地位を確立しました。1968年には、マルコム・サージェントの後任としてロイヤル・コーラル・ソサエティの常任指揮者に就任。1969年から1974年まではハダースフィールド・コーラル・ソサエティの常任指揮者も務め、合唱指揮者としての確固たる地位を築きました。

モリスは合唱指揮者としての活動が広く知られていますが、マーラーの交響曲解釈でも高い評価を得ています。1960年代から1970年代にかけてマーラーの交響曲全集を録音するなど、マーラー作品の普及に大きく貢献しました。また、1972年にはデリック・クックが作成した交響曲第10番の実用譜第2版を初演し、1988年にはバリー・クーパーによるベートーヴェンの交響曲第10番の世界初録音を行うなど、音楽史に残る偉業を成し遂げました。これらの活動を通じて、モリスは単なる指揮者ではなく、音楽史を塗り替える音楽家としての足跡を残しました。

ウィン・モリスは、その生涯を通じて、合唱音楽とオーケストラ音楽の両分野において、卓越した才能と情熱を示しました。彼の音楽への貢献は、これからも多くの音楽愛好家や音楽家によって語り継がれることでしょう。

2010年、モリスはロンドンにてその生涯を閉じましたが、彼の音楽的遺産は今もなお、多くの人々に感動を与え続けています。

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