ウェストミンスター駅

ウェストミンスター駅は、ロンドン中心部のウェストミンスター地区に位置する、ロンドン地下鉄の主要駅です。サークル線、ディストリクト線、そしてジュビリー線の3路線が乗り入れ、ロンドン観光の拠点として、またビジネスの中心地として重要な役割を担っています。

サークル線とディストリクト線は同じホームを使用する地下駅ですが、ジュビリー線はそれらよりも深い地下に位置し、直交する形で設置されています。駅はポートカリス・ハウスの直下、ブリッジ・ストリートとヴィクトリア・エンバンクメントの交差点にあり、ウェストミンスター橋に隣接していることから、ウェストミンスター宮殿にも非常に近接しています。

駅周辺には、イギリスの歴史と文化を象徴する建造物が数多く存在します。ウェストミンスター宮殿（国会議事堂）、ウェストミンスター寺院、そして第二次世界大戦の戦没者を追悼する慰霊碑など、歴史的建造物がすぐ近くに位置しています。また、イギリス政府の中枢である大蔵省や首相官邸であるダウニング街10番地も徒歩圏内にあり、政治の中心地としての側面も併せ持っています。さらに、セント・ジェームズ・パークやロンドン・アイといった観光スポットも近く、観光客にとっても非常に魅力的な立地です。

ウェストミンスター駅の歴史は古く、1868年にメトロポリタン・ディストリクト鉄道（現在のディストリクト線）の開業と共に「ウェストミンスター・ブリッジ駅」として開業しました。当初は東の終点でしたが、路線延伸に伴い、他の路線との相互直通運転も開始されました。インナー・サークル、アウター・サークル、ミドル・サークルといった運行系統が運行されていましたが、その後、運行区間の短縮などが行われました。1907年には現在の名称に変更され、1920年代にはチャールズ・ホールデンによる設計で脇の出入口が新設されました。これはロンドン地下鉄の建築家による初期の代表的なプロジェクトの一つとされています。

1999年には、ジュビリー線の延伸に伴い、駅はホプキンス・アーキテクツによって全面的に改築されました。この改築工事では、既存の駅舎を完全に撤去し、サークル線・ディストリクト線の線路を300mm下げるという、極めて高度な技術を要する作業が行われました。ジュビリー線のプラットフォームは地表から約39m下に位置し、ロンドン地下鉄で最も深い位置にあるプラットフォームとなっています。この深さでの工事は、ロンドン都心部において当時最も深い掘削工事でした。限られた建設スペースを有効に活用するため、2本のトンネルは通常の並列配置ではなく、片方がもう片方のトンネルの上に重なるという特殊な構造となっています。

改築されたウェストミンスター駅は、「宇宙時代」を思わせる壮大なデザインが特徴です。巨大なコンクリートの梁と円柱、ステンレス製のエスカレーター、そして洗練された内装は、他のジュビリー線駅とは一線を画す風格を漂わせています。駅舎の構造物は、駅舎上部に建設されたポートカリス・ハウスの重量を支える役割も担っています。ジュビリー線のプラットフォームには、安全性の向上と空調効率の改善を目的としたホームドアが設置されています。

ウェストミンスター駅は、その歴史とデザイン、そしてロンドンの中心地という立地から、単なる交通拠点以上の存在感を持ちます。映画「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」にも登場しており、ロンドンの文化と歴史を象徴する場所の一つと言えるでしょう。多くのバス路線も乗り入れており、周辺へのアクセスも良好です。隣接駅は、サークル線・ディストリクト線ではセント・ジェームズ・パーク駅とエンバンクメント駅、ジュビリー線ではグリーン・パーク駅とウォータールー駅となっています。

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