エンバンクメント駅

ロンドン地下鉄エンバンクメント駅：歴史と交通の要衝

ロンドン中心部に位置するエンバンクメント駅は、ロンドン地下鉄の主要駅として、サークル線、ディストリクト線、ベーカールー線、そしてノーザン線の4路線が乗り入れています。テムズ川北岸のヴィクトリア堤防とストランド地区にそれぞれ出入口を持つ、ロンドン交通の要衝であり、歴史的建造物や観光名所にも隣接する重要な拠点となっています。

開業と初期の歴史

エンバンクメント駅の歴史は、1870年にメトロポリタン・ディストリクト鉄道（MDR、現在のディストリクト線）の延伸開業と同時に始まりました。ウェストミンスター駅からブラックフライアーズ駅への延伸工事は、ヴィクトリア・エンバンクメントの建設と一体的に進められ、開削工法によって実現しました。駅は当初、近接するサウス・イースタン鉄道のチャリング・クロス駅の名を借りて「チャリング・クロス駅」と呼ばれていました。

MDRはメトロポリタン鉄道と接続しており、両社はライバル関係にあったものの、相互直通運転を行う「インナー・サークル」路線を運行していました。その後、「アウター・サークル」と「ミドル・サークル」路線も運行開始しますが、これらの路線は20世紀初頭に運行区間が短縮され、エンバンクメント駅まで到達しなくなりました。

多路線の交錯と改称

1906年には、ベーカー・ストリート・アンド・ウォータールー鉄道（BS&WR、現在のベーカールー線）が、MDRのホームと交差する形で独立した地下駅を開業しました。しかし、BS&WRは自社の駅を異なる名称で呼んでおり、乗り換えは可能でしたが、統一されていませんでした。

1914年には、チャリングクロス・ユーストン・アンド・ハムステッド鉄道（CCE&HR、現在のノーザン線の一部）が延伸開業し、BS&WRとの乗り換えが容易になるように設計されました。両鉄道会社はロンドン地下電気鉄道に属しており、それぞれの会社は独立した駅を運営していました。CCE&HR延伸開業により、駅は「チャリング・クロス（エンバンクメント）」と暫定的に呼ばれるようになり、その後1915年には「チャリング・クロス駅」と改称されました。

1920年代には、ノーザン線の建設に伴い、CCE&HRはウォータールー駅まで延伸されました。テムズ川下のループ線は廃止され、新しいトンネルが建設されました。第二次世界大戦中は、爆撃による浸水を防ぐため、トンネルが一時的に閉鎖されるなど、幾多の困難を乗り越えてきました。

近年の歴史と駅周辺

1949年には、インナー・サークル系統が「サークル線」として独立し、1974年には駅名が「チャリング・クロス・エンバンクメント駅」と改称されました。1976年には、ストランド駅とトラファルガー・スクエア駅が「チャリング・クロス駅」と改称されたことに伴い、現在の「エンバンクメント駅」となりました。

駅周辺には、ナショナル・レールのチャリング・クロス駅、ハンガーフォード橋、ロイヤル・フェスティバル・ホール、テムズ・エンバンクメント、トラファルガー広場、ストランド地区といった、ロンドンの主要な観光地や交通拠点が集まっています。

文化と映画

エンバンクメント駅は、1998年の映画『スライディング・ドア』や、1966年の映画『Daleks - Invasion Earth 2150 AD』にも登場しており、映画史にもその名を刻んでいます。

隣の駅

ベーカールー線：チャリング・クロス駅、ウォータールー駅
サークル線：ウェストミンスター駅、テンプル駅
ディストリクト線：ウェストミンスター駅、テンプル駅
ノーザン線（チャリング・クロス支線）：チャリング・クロス駅、ウォータールー駅

エンバンクメント駅は、ロンドンの歴史と交通を語る上で欠かせない、重要な駅です。その複雑な歴史と多様な路線の乗り入れは、ロンドンの発展と都市構造の変遷を物語っています。

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