ディストリクト線

ディストリクト線：ロンドンを網羅する地下鉄路線

ロンドン地下鉄のディストリクト線は、全長64km、60駅を有する主要路線です。路線図では緑色で表示され、そのうち25駅は地下駅です。ロンドン中心部の地下を走り、年間約1億7000万人以上が利用する、ロンドン地下鉄で最も利用客の多い路線であり、ロンドンの交通ネットワーク全体でも4番目に利用者が多い路線として、ロンドンの生活に欠かせない存在となっています。

歴史

ディストリクト線の歴史は古く、1868年、メトロポリタン・ディストリクト鉄道(MDR)によって開業しました。その後、アメリカ人実業家チャールズ・ヤーキス氏に買収され、1930年代の国有化まで、地下鉄グループの一翼を担いました。

当初はアックスブリッジ駅とハウンズロウ・ウェスト駅までの支線がありましたが、これらは現在はピカデリー線に統合されています。東方面への路線は1910年にサウスエンド・オン・シーまで延伸され、その後1911年にはさらにショーブリーネスまで拡大しましたが、1939年に運行を停止しました。また、1883年から1885年にかけては、イーリング・ブロードウェイ駅からグレート・ウェスタン本線と直通運転を行い、ウィンザーまで運行していました。

路線と駅

ディストリクト線は複数の支線から構成されています。主な支線と本線は以下の通りです。

リッチモンド支線: リッチモンド駅からターナム・グリーン駅まで。ロンドン・オーバーグラウンドも運行しています。
イーリング支線: イーリング・ブロードウェイ駅からターナム・グリーン駅、アールズ・コート駅まで。
ウィンブルドン支線: ウィンブルドン駅からアールズ・コート駅まで。
ケンジントン(オリンピア)支線: ケンジントン(オリンピア)駅からアールズ・コート駅まで。通常はエッジウェア・ロード支線方面へ運行されます。
本線: アールズ・コート駅からタワーヒル駅、アップミンスター駅まで。
エッジウェア・ロード支線: アールズ・コート駅からハイ・ストリート・ケンジントン駅、エッジウェア・ロード駅まで。サークル線と線路を共有しています。

これらの支線は、主にアールズ・コート駅で本線と接続しています。

廃止された駅や支線

歴史の中で、いくつかの駅や支線が廃止されています。例えば、サウス・アクトン支線、マーク・レーン駅、タワー・オブ・ロンドン駅、セント・メアリーズ駅などが挙げられます。

車両と運行系統

現在、ディストリクト線ではS7形車両が使用されており、サークル線やハマースミス＆シティ線と共通運用されています。過去にはD78形やC69・C77形車両も運行されていましたが、現在は全て引退しています。ハイ・ストリート・ケンジントン駅からエッジウェア・ロード駅間では、プラットホームの短さから、最後部車両でドアカットが行われます。

日中時間帯の運行系統は以下の通りです（1時間あたりの本数）。

イーリング・ブロードウェイ駅～タワーヒル駅：6本
リッチモンド駅～アップミンスター駅：6本
ウィンブルドン駅～アップミンスター駅：6本
ウィンブルドン駅～エッジウェア・ロード駅：6本
* ケンジントン(オリンピア)駅～ハイ・ストリート・ケンジントン駅：3本

その他の利用可能な路線

アップミンスター駅、バーキング駅、ウェストハム駅、フェンチャーチ・ストリート駅間は、ナショナル・レールのc2cも運行しており、オイスターカードで利用できます。また、ウィンブルドン支線のイースト・プットニー駅とウィンブルドン駅間には、サウスウェスト・トレインズが、線路の工事や問題発生時に運行される場合があります。

フィクションにおける登場

BBCのドラマ『Eastenders』に登場する架空の駅、ウォルフォード・イースト駅はディストリクト線にある設定で、ブロムリー・バイ・ボウ駅で撮影が行われています。

ディストリクト線は、ロンドンの歴史と発展を反映し、現代のロンドン社会に不可欠な交通インフラとして重要な役割を担っています。

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