ウォルター・ヘンリー・メドハースト
ウォルター・ヘンリー・メドハースト（Walter Henry Medhurst、1796年4月29日 - 1857年1月24日）は、会衆派のイギリス人宣教師であり、中国学者、出版人として多岐にわたる活動を行いました。彼は上海に初めて足を踏み入れた宣教師の一人であり、中国語訳聖書の翻訳、改訂、出版に生涯を捧げました。中国名は麦都思(Mài Dūsī)として知られています。
日本においては、メドハーストは『英和・和英語彙』の著者として特に有名です。この辞書は、村上英俊によって1855年（安政2年）に『洋学捷径 仏英訓弁』の英語の部で紹介され、1857年（安政4年）には『英語箋前篇』、1863年（文久3年）には『英語箋後篇』として原書版が翻刻出版されました。
メドハーストは1796年にロンドンで生まれました。15歳でグロスターにて印刷技術を習得し、1816年にはロンドン伝道協会（LMS）に参加してマラッカへ赴任します。ロンドンからマラッカへ向かう途中、マドラスに数ヶ月滞在した際に、エリザベス・マーティンと結婚し、共にマラッカへ向かいました。1817年6月12日にマラッカに到着すると、ウィリアム・ミルンの助手として、中国語雑誌「察世俗毎月統記伝」の発行を支援しました。1819年にはペナンへ移動し、学校を開設。同年には牧師按手を受け、ペナンとバタヴィアで宣教活動に従事しました。バタヴィアでは学校の設立だけでなく、印刷所も開設しました。1822年にミルンが亡くなると、バタヴィアがロンドン伝道協会の中心的な印刷所としての役割を担うようになりました。
1834年、ロバート・モリソンが亡くなると、メドハーストはモリソンの息子であるジョン・ロバート・モリソン、カール・ギュツラフ、イライジャ・コールマン・ブリッジマンとともに、モリソンが翻訳した中国語訳聖書の改訂に取り組みました。しかし、英国外国聖書協会はこの改訂を認めず、新約聖書と旧約聖書のヨシュア記まで翻訳したところで共同作業は中断され、残りの部分はギュツラフが一人で翻訳しました。この版は、太平天国で利用されました。
アヘン戦争後、メドハーストは新たに開港した上海へ移り、そこで宣教活動を続けました。1843年には香港で会議が開かれ、イギリスとアメリカの宣教師による委員会が共同で中国語訳聖書の改訂を行うことになりました。委員会の協力者として中国人の王韜などがおり、1852年に改訂された『新約全書』、1853年には『旧約全書』が出版されました。この改訂訳は、英国外国聖書協会に正式に採用されました。この翻訳は文理訳（文言文、漢文）でしたが、メドハーストらは『新約全書』を官話にも翻訳し、1857年に出版しました。
メドハーストは、かつてバタヴィアに設立した印刷所を上海に移転させ、墨海書館（The London Missionary Society Press）としました。この印刷所では、宣教用の書籍だけでなく、西洋の政治や科学などの書物を中国語に翻訳して出版しました。
1843年には、ニューヨーク大学から名誉[[神学博士]]の称号を授与されました。1856年に上海を離れて帰国の途に就き、1857年1月22日にロンドンに到着しましたが、その2日後に死去しました。
彼の同名の息子（1823年-1885年）も、イギリス領事として中国で活躍しました。
メドハーストは多様な言語に通じており、自身の印刷所を持っていたため、数多くの著作を出版しました。その数は、中国語によるもの59種、英語27種、マレー語6種に及びます。
尚徳『東西史記和合』(1829年): 中国の王統と西洋の歴史を対比し、両者の古代史の一致を主張した著作です。また、イギリスの広東進出によって両者の歴史が再び結びつくという独自の歴史観を展開しています。
尚徳『新増三字経』: キリスト教の教えを『三字経』の形式で解説した著作です。
A Chinese and English Dictionary (1842年): 漢英字典です。
English and Chinese Dictionary (1847-1848年): 英漢字典です。
A dictionary of the Hok-këèn dialect of the Chinese language (1832年): 福建方言の字典です。
An English and Japanese, and Japanese and English vocabulary (1830年): 英和・和英辞典です。日本では『英語箋』として翻刻出版されました。
Philo-Sinensis (1835年): 朝鮮語と日本語の単語集で、シーボルトが持ち帰った洪舜明の『倭語類解』を元に作成されました。
China, its state and prospects (1838年): 中国の現状と展望について論じた著作です。
A dissertation on the theology of the Chinese, with a view to the elucidation of the most appropriate term for expressing the Deity, in the Chinese language (1847年): 「God」の中国語訳について考察した著作です。
On the true meaning of the word Shin (1849年): 漢字「神」の意味を『佩文韻府』に基づいて考察した著作です。
The Shoo King, or the historical classic (1846年): メドハーストは、『書経』を初めて中国語原文から英訳しました。
A glance at the interior of China (1849年): 絹と茶の産地を訪れた旅行記で、『農政全書』の抄訳も含まれています。
これらの著作は、メドハーストの語学力と出版活動の幅広さを示すものです。彼の功績は、宣教活動だけでなく、中国語と日本語の研究においても大きな影響を与えました。
日本においては、メドハーストは『英和・和英語彙』の著者として特に有名です。この辞書は、村上英俊によって1855年（安政2年）に『洋学捷径 仏英訓弁』の英語の部で紹介され、1857年（安政4年）には『英語箋前篇』、1863年（文久3年）には『英語箋後篇』として原書版が翻刻出版されました。
生涯
メドハーストは1796年にロンドンで生まれました。15歳でグロスターにて印刷技術を習得し、1816年にはロンドン伝道協会（LMS）に参加してマラッカへ赴任します。ロンドンからマラッカへ向かう途中、マドラスに数ヶ月滞在した際に、エリザベス・マーティンと結婚し、共にマラッカへ向かいました。1817年6月12日にマラッカに到着すると、ウィリアム・ミルンの助手として、中国語雑誌「察世俗毎月統記伝」の発行を支援しました。1819年にはペナンへ移動し、学校を開設。同年には牧師按手を受け、ペナンとバタヴィアで宣教活動に従事しました。バタヴィアでは学校の設立だけでなく、印刷所も開設しました。1822年にミルンが亡くなると、バタヴィアがロンドン伝道協会の中心的な印刷所としての役割を担うようになりました。
1834年、ロバート・モリソンが亡くなると、メドハーストはモリソンの息子であるジョン・ロバート・モリソン、カール・ギュツラフ、イライジャ・コールマン・ブリッジマンとともに、モリソンが翻訳した中国語訳聖書の改訂に取り組みました。しかし、英国外国聖書協会はこの改訂を認めず、新約聖書と旧約聖書のヨシュア記まで翻訳したところで共同作業は中断され、残りの部分はギュツラフが一人で翻訳しました。この版は、太平天国で利用されました。
アヘン戦争後、メドハーストは新たに開港した上海へ移り、そこで宣教活動を続けました。1843年には香港で会議が開かれ、イギリスとアメリカの宣教師による委員会が共同で中国語訳聖書の改訂を行うことになりました。委員会の協力者として中国人の王韜などがおり、1852年に改訂された『新約全書』、1853年には『旧約全書』が出版されました。この改訂訳は、英国外国聖書協会に正式に採用されました。この翻訳は文理訳（文言文、漢文）でしたが、メドハーストらは『新約全書』を官話にも翻訳し、1857年に出版しました。
メドハーストは、かつてバタヴィアに設立した印刷所を上海に移転させ、墨海書館（The London Missionary Society Press）としました。この印刷所では、宣教用の書籍だけでなく、西洋の政治や科学などの書物を中国語に翻訳して出版しました。
1843年には、ニューヨーク大学から名誉[[神学博士]]の称号を授与されました。1856年に上海を離れて帰国の途に就き、1857年1月22日にロンドンに到着しましたが、その2日後に死去しました。
彼の同名の息子（1823年-1885年）も、イギリス領事として中国で活躍しました。
主な著作
メドハーストは多様な言語に通じており、自身の印刷所を持っていたため、数多くの著作を出版しました。その数は、中国語によるもの59種、英語27種、マレー語6種に及びます。
尚徳『東西史記和合』(1829年): 中国の王統と西洋の歴史を対比し、両者の古代史の一致を主張した著作です。また、イギリスの広東進出によって両者の歴史が再び結びつくという独自の歴史観を展開しています。
尚徳『新増三字経』: キリスト教の教えを『三字経』の形式で解説した著作です。
A Chinese and English Dictionary (1842年): 漢英字典です。
English and Chinese Dictionary (1847-1848年): 英漢字典です。
A dictionary of the Hok-këèn dialect of the Chinese language (1832年): 福建方言の字典です。
An English and Japanese, and Japanese and English vocabulary (1830年): 英和・和英辞典です。日本では『英語箋』として翻刻出版されました。
Philo-Sinensis (1835年): 朝鮮語と日本語の単語集で、シーボルトが持ち帰った洪舜明の『倭語類解』を元に作成されました。
China, its state and prospects (1838年): 中国の現状と展望について論じた著作です。
A dissertation on the theology of the Chinese, with a view to the elucidation of the most appropriate term for expressing the Deity, in the Chinese language (1847年): 「God」の中国語訳について考察した著作です。
On the true meaning of the word Shin (1849年): 漢字「神」の意味を『佩文韻府』に基づいて考察した著作です。
The Shoo King, or the historical classic (1846年): メドハーストは、『書経』を初めて中国語原文から英訳しました。
A glance at the interior of China (1849年): 絹と茶の産地を訪れた旅行記で、『農政全書』の抄訳も含まれています。
これらの著作は、メドハーストの語学力と出版活動の幅広さを示すものです。彼の功績は、宣教活動だけでなく、中国語と日本語の研究においても大きな影響を与えました。
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