ウォルター・マーチ

ウォルター・スコット・マーチ

ウォルター・スコット・マーチ（Walter Scott Murch, 1943年7月12日 - ）は、アメリカ合衆国ニューヨークで生まれた著名な音響技師および編集技師です。彼は映画界でのキャリアを通じて、数々の名作に携わり、映画制作における技術革新を実現したことで知られています。特に、フランシス・フォード・コッポラの映画作品に多く参加し、その手腕を発揮しました。彼の代表作には『カンバセーション…盗聴…』や『地獄の黙示録』、また『ゴッドファーザー PART III』などがあり、これらの作品では音響だけでなく、編集作業でも重要な役割を果たしています。

生い立ち

ウォルター・マーチは1943年にニューヨークで誕生しました。父親はカナダ出身の画家であり、独特の静物画で知られていました。1965年、彼はジョンズ・ホプキンス大学を卒業し、その後、南カリフォルニア大学の映画学部に進学しました。そこで彼は、ジョージ・ルーカスやジョン・ミリアス、さらにはフランシス・フォード・コッポラとも知り合いになります。このようなつながりは、マーチが後に映画制作において成功を収める上で大きな影響を与えました。

キャリア

1967年、南カリフォルニア大学を卒業したマーチは、エンサイクロペディア・ブリタニカ・エデュケーションフィルム社で職を得ます。最初は雑用係として始まりましたが、そこでの経験を経て編集に携わることになります。これを経て、1968年12月にはルーカスの紹介を受け、コッポラの『雨のなかの女』に音響技師として参加。この映画で彼の名前が初めてクレジットされた商業作品となりました。

その後、マーチはコッポラやルーカスと共に映画制作スタジオ「アメリカン・ゾエトロープ」を設立し、映画界における重要なメンバーとして活動します。1970年代には『THX 1138』や『アメリカン・グラフィティ』など、著名な作品で音響技師を務めました。特に『カンバセーション…盗聴…』では音響だけでなく、編集監督としてもクレジットされ、その創造性が強く評価されました。

1979年公開の『地獄の黙示録』では、マーチは音響技師として新たな録音技術を駆使し、多重録音の先駆者として名を馳せます。この際、彼はアカデミー録音賞も受賞しました。後に、一般に「サウンドデザイナー」と名付けられる役割が彼の作品によって広まりました。

1985年、マーチは『オズ』で監督デビューを果たしますが、商業的には成功を収められませんでした。その後彼は映画製作の裏方として活動を続けますが、1996年に公開された『イングリッシュ・ペイシェント』にて、再び大きな成功を収め、編集賞と二度目の録音賞を受賞します。この作品ではノンリニア編集ソフトを使用したことで、デジタル編集の先駆者ともなりました。

その後もマーチは『リプリー』や『コールド マウンテン』、さらには『テトロ 過去を殺した男』など、さまざまな作品に関わり続け、その豊富な経験を糧に映画界で活躍しています。2007年には彼をテーマにしたドキュメンタリー『Murch』が公開され、彼の映画制作論に迫る内容が注目を集めました。

代表作

以下はウォルター・マーチが携わった代表的な作品です。

• - 1969年 『雨のなかの女』 - 音響
• - 1971年 『THX 1138』 - 脚本/音響
• - 1973年 『アメリカン・グラフィティ』 - 音響
• - 1974年 『カンバセーション…盗聴…』 - 編集/音響
• - 1979年 『地獄の黙示録』 - 編集/音響
• - 1996年 『イングリッシュ・ペイシェント』 - 編集/音響

著書

マーチは映画編集に関する著書も執筆しており、『映画の瞬き』という作品が特に有名です。これにより彼の映画制作に対する哲学や手法が広く知られるようになりました。彼の貢献は、映画の編集と音響の技術革新にとどまらず、映像表現全体に影響を与えています。

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