テトロ 過去を殺した男

『テトロ 過去を殺した男』

『テトロ 過去を殺した男』（Tetro）は、2009年に公開されたドラマ映画で、フランシス・フォード・コッポラが監督・脚本・製作を担当し、ヴィンセント・ギャロやオールデン・エアエンライクが出演しています。撮影は2008年にアルゼンチンのブエノスアイレスやパタゴニア、さらにはスペインで行われました。アメリカでは2009年6月11日に限定公開されました。

あらすじ

この物語は、アンジーという名の兄がかつて作家として期待されながら、衝撃的な出来事を経て行方不明になるところから始まります。彼の弟、ベニーは18歳の誕生日を迎える前にアルゼンチンのブエノスアイレスへと旅立ち、兄が再登場します。しかし、アンジーは「テトロ」という名を名乗り、過去の自分を完全に否定して新たな人生を歩んでいる様子です。この兄の変わり果てた姿にベニーは戸惑いと不満を抱きますが、兄のある持ち物を通じて真実に触れることになり、状況は一変します。

キャスト

本作には、多彩なキャストが揃っています。特に主人公テトロ役を演じるヴィンセント・ギャロについては、コッポラ自身が彼のキャスティングが観客に新たな視点を提供すると述べています。ギャロがこの役を得る以前にはマット・ディロンが考慮されていたそうです。ベニー役にはオールデン・エアエンライク、テトロの恋人ミランダにはマリベル・ベルドゥなどが出演しています。

また、アローンという役柄を演じるカルメン・マウラは、キャラクターの性別が脚本の段階で男性から女性に変更され、より深い人間関係が描かれています。製作陣の工夫により、多様なキャラクターが織り成す複雑なドラマが展開されます。

製作の背景

この映画の製作は、フランシス・フォード・コッポラが『コッポラの胡蝶の夢』の編集中に執筆した脚本に基づいています。コッポラはアルゼンチンの文化や芸術に強い魅力を感じ、この土地での制作を決定しました。製作当初のスケジュールには遅れが生じるものの、最終的に多くの困難を乗り越えて撮影が完了しました。

2008年5月には撮影の合間に俳優組合とのトラブルが発生し、中止の危機に直面しましたが、最終的には問題が解決し、全工程は無事に進んでいきました。映画はMacintoshコンピュータを使用してFinal Cut Proで編集されています。

評価と反響

公開後、本作は批評家から概ね好評を得ています。Metacriticでは、平均スコア65点という評価を得ており、Rotten Tomatoesでも71%の支持を得ていました。特に『シカゴ・サンタイムズ』のロジャー・イーバートは、作品を評価し、ヴィンセント・ギャロの演技を高く評価しました。

また、2009年には『カイエ・デュ・シネマ』のトップテンで第6位に選ばれるなど、その存在感を示しています。『テトロ 過去を殺した男』は、家族の絆や個人の過去と向き合わせるというテーマを深く掘り下げた映画として、多くの観客に印象を残すことでしょう。

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