ウォルフ359

ウォルフ359とは

ウォルフ359は、しし座の方向、地球から約7.8光年離れた場所に存在する赤色矮星です。この星は、見かけの等級が13.5と非常に暗く、観測には大型の望遠鏡が必要となります。太陽系外では、ケンタウルス座α星系やバーナード星などに次いで地球に近い恒星として知られています。その近さから、SF作品の舞台にも登場することがあります。

ウォルフ359は、「超低質量星」と呼ばれる、既知の恒星の中で最も小さい部類に属します。この星の名前は、1918年にドイツの天文学者マックス・ウォルフが写真観測によって発見したことに由来しています。ウォルフ359に最も近い恒星はロス128で、約3.79光年離れています。

惑星系の探求

2011年、ケックII望遠鏡を用いたドップラー分光法による観測では、ウォルフ359の周囲を公転する伴星の存在を示す証拠は見つかりませんでした。この観測は、海王星以上の質量を持つ巨大な太陽系外惑星を検出できるほどの高感度で行われました。

しかし、2019年6月には、イギリスのハートフォードシャー大学のチームが、チリのHARPSとハワイのHIRESの観測データを用いて、ウォルフ359の周囲に2つの太陽系外惑星候補を発見したというプレプリントが報告されました。これらの惑星は、確認されれば、プロキシマ・ケンタウリと同様に、低質量の惑星が近くに、高質量の惑星が遠くに存在するという特徴を持つ惑星系となる可能性がありました。特に、内側を公転するとされた惑星候補ウォルフ359cは、地球の約40倍の放射エネルギーを受けているため、生命が存在できる可能性は低いと考えられました。一方、外側の惑星候補ウォルフ359bは、低温のスーパーネプチューンに分類され、海王星が太陽から受けるエネルギーの約3分の1から4分の1程度のエネルギーを受けていると推測されました。

その後のCARMENESによる観測で、内側の惑星候補ウォルフ359cに対応する信号は、惑星によるものではなく、恒星の自転による誤検出であることが判明しました。2023年には、MAROON-X、CARMENES、HARPS、HIRESによるドップラー分光法と画像データの観測が行われましたが、ウォルフ359bの存在を確認することはできませんでした。この観測では、恒星から10天文単位以内に褐色矮星や巨大ガス惑星が存在する可能性、1天文単位以内に木星の半分以上の質量を持つ惑星が存在する可能性、そして0.1天文単位以内に天王星よりも質量の大きい惑星が存在する可能性も否定されました。

ウォルフ359の近傍

ウォルフ359の近傍には、ロス128の他に、多くの恒星が存在します。これらの星々は、互いに重力的な影響を及ぼし合っており、その動きは複雑です。ウォルフ359は、その小ささと暗さから観測が難しいですが、その近さから、他の恒星との比較研究や、惑星系の探求において重要な対象となっています。

まとめ

ウォルフ359は、地球に近い赤色矮星であり、その惑星系の探求は、太陽系外惑星の多様性を理解する上で重要な研究対象です。現在のところ、確実な惑星は発見されていませんが、今後の観測によって新たな発見が期待されます。その近さからSF作品の舞台にもなるなど、多くの人々の興味を惹きつけています。

注釈

赤色矮星：質量が小さく、表面温度が低い恒星。寿命が非常に長い。
ドップラー分光法：恒星のスペクトル線のずれから、惑星などの天体の存在を検出する方法。
スーパーネプチューン：海王星よりも大きく、ガスを主成分とする惑星。
天文単位：地球と太陽の間の平均距離。

関連項目

近い恒星の一覧

外部リンク

SolStation.com: Wolf 359 (英語)
* The Encyclopedia of Astrobiology, Astronomy, and Spaceflight (英語)

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