ウォーキーン・アンドゥハー

ホアキン・アンドゥハー：栄光と苦悩の投手人生

1952年12月21日、ドミニカ共和国に生まれたホアキン・アンドゥハーは、16歳でシンシナティ・レッズと契約。しかし、レッズ黄金時代を支えた「ビッグ・レッド・マシーン」の中、メジャー昇格は叶わず、1975年10月にヒューストン・アストロズへ移籍します。

1976年4月、メジャーデビューを果たすと、持ち前の才能を開花させ始めます。アストロズでは、広い本拠地アストロドームを武器に、安定した成績を残し、1977年と1979年にはオールスターゲームにも選出。しかし、2ケタ勝利を挙げられたのはこの2シーズンのみでした。アストロズでの5シーズン余りの間、彼は被本塁打率の低さを誇り、その守備力も光るものがありました。

転機が訪れたのは1981年。セントルイス・カージナルスへの移籍です。移籍後、アンドゥハーの潜在能力は一気に開花しました。1982年には15勝10敗、防御率2.47という好成績を収め、チームの地区優勝に大きく貢献。ナ・リーグチャンピオンシップシリーズでは、重要な第3戦で勝利投手となり、リーグ優勝を決定づけました。続くワールドシリーズでも第3戦、そして迎えた最終第7戦で勝利投手となり、チームのワールドシリーズ制覇に導く活躍を見せます。

1984年はまさにアンドゥハーのピークでした。リーグ最多となる20勝を挙げ、5年ぶりにオールスターに選出。さらに、ゴールドグラブ賞とカムバック賞を受賞し、最高のシーズンを締めくくります。

しかし、順風満帆な野球人生は長く続きませんでした。1985年、ピッツバーグ薬物裁判に関連してコカイン所持・服用の容疑で出場停止処分を受けます。処分は免除されたものの、減俸や社会奉仕活動などの制裁を受けました。それでも、彼は2年連続で20勝以上を挙げ、チームの地区優勝とリーグ優勝に貢献。しかし、ワールドシリーズではカンザスシティ・ロイヤルズに敗れ、その敗戦には、一塁塁審の誤審が大きく影響したとされています。

さらに、1986年のワールドシリーズ第7戦では、審判の判定に激怒した監督と共々退場処分となり、出場停止処分を受けました。その後、オークランド・アスレチックスに移籍するも、アスレチックス時代にはDH制のあるア・リーグに所属しながらも行った打撃練習で負傷し、投球フォームを崩してしまい、1987年にはわずか3勝に終わり、チームを解雇されます。その後古巣アストロズに戻りますが、2勝で解雇され、1989年にモントリオール・エクスポズのスプリングトレーニングに招待されるも契約には至らず、現役を引退しました。

アンドゥハーは通算7本のホームランを記録しており、打撃も得意としていました。特に1979年にはアストロドームで特大ホームランを放つなど、打者としての才能も垣間見せています。

引退後は祖国ドミニカ共和国で運送業を営み、野球振興にも尽力。ハリケーン被災者への援助活動など、社会貢献にも積極的に取り組みました。2015年9月8日、糖尿病の合併症により52歳でこの世を去りました。

アンドゥハーの野球人生は、華々しい活躍と苦悩が入り混じった、ドラマチックなものでした。ワールドシリーズ制覇という栄光、薬物問題、そして審判との衝突など、数々の出来事を経て、彼は野球史にその名を刻みました。彼の功績は、メジャーリーグの歴史の中に、そしてドミニカ共和国の野球界に、長く語り継がれることでしょう。彼の多彩なキャリアは、多くの野球ファンに、感動と記憶に残る物語を与え続けています。

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