ウスタシュ3世 (ブローニュ伯)

ウスタシュ3世の生涯

ウスタシュ3世は、11世紀から12世紀にかけて西ヨーロッパで活躍したブローニュ伯です。1050年頃に生まれ、1125年頃に亡くなりました。彼は、ブローニュ伯ウスタシュ2世の息子として生まれ、1087年に父の後を継いでブローニュ伯となりました。彼の人生は、十字軍への参加やエルサレム王位を巡る出来事など、波乱に満ちたものでした。

若年期

ウスタシュ3世は、1050年頃にウスタシュ2世とイド・ド・ブローニュの三男として誕生しました。1088年、彼はイングランド王ウィリアム2世に対して反乱を起こし、ノルマンディー公ロベール2世と同盟を結びました。しかし、ロベール2世がイングランドに侵攻しなかったため、ウスタシュはロチェスター城に籠城せざるを得なくなりました。兵糧が底をつき、最終的にウィリアム2世に降伏し、ノルマンディーへ帰還しました。1091年には、ロベール2世がウィリアム2世をイングランド王として承認する条約が締結され、ウスタシュ3世はロベール2世の側についていました。

十字軍への参加

1096年、ウスタシュ3世はローマ教皇ウルバヌス2世の呼びかけに応じ、第1回十字軍に参加しました。弟のゴドフロワ・ド・ブイヨンやボードゥアンらとともに従軍し、ニカイア攻囲戦やドリュラエウムの戦い、アンティオキア攻囲戦などの重要な戦いに参加しました。ドリュラエウムの戦いでは、ムスリムの奇襲を受けたターラント公ボエモンを救出し、アンティオキア攻囲戦では、奇襲を仕掛けたムスリム軍を撃退するなどの活躍を見せました。

1099年1月、ウスタシュ3世はRujで開催された軍議に参加し、アンティオキアの処遇を巡って対立していたトゥールーズ伯レーモン4世とターラント公ボエモンの仲介を試みました。その後、彼はレーモン4世と共にマアッラト・アン＝ヌウマーンを攻撃し、ナーブルスも攻撃しました。同年7月には、エルサレムを包囲攻撃し、ゴドフロワと共にエルサレム市街に一番乗りを果たしました。攻城塔から城壁に乗り込んだ彼は、ムスリム軍と激戦を繰り広げ、制圧後にエルサレム市民の虐殺に関与したとされています。この虐殺は、彼の悪名高い黒歴史として知られています。エルサレム制圧後、彼はアスカロンの戦いにも参加し、ファーティマ朝軍と戦いました。

また、ウスタシュ3世は、テンプル騎士団設立の際の後援者の1人としても知られています。

帰還と晩年

ゴドフロワとボードゥアンは聖地に残りましたが、ウスタシュ3世は母国ブローニュを統治するために帰還しました。ブローニュで鋳造された銀貨には、エルサレム城壁の上に立つライオンの像が彫刻され、彼の十字軍での活躍が示されています。

1118年、エルサレム王ボードゥアン1世が崩御した後、次期エルサレム王位がウスタシュ3世に提案されました。当初は関心を示さなかったものの、最終的に受け入れ、エルサレムへ出発しました。しかし、プーリャ地方に差し掛かった頃、縁戚のボードゥアン・デュ・ブールがエルサレム王に即位したとの報告を受け、ブローニュへ帰還しました。

ブローニュに戻ったウスタシュ3世は、リュミリーにクリュニー会派の修道院を設立し、修道士として余生を過ごしました。そして1125年頃に生涯を閉じました。彼の死後、ブローニュ伯国は娘のマティルデに継承されました。

子女

ウスタシュ3世は、スコットランド王マルカム3世の娘であるメアリー・オブ・スコットランドと結婚し、一人の娘マティルドをもうけました。

マティルド（1103/5年 - 1152年）は、イングランド王スティーブンと結婚し、イングランド王妃となりました。また、父ウスタシュ3世の死後、ブローニュ伯位を継承しました。

まとめ

ウスタシュ3世は、ブローニュ伯としてだけでなく、第1回十字軍における活躍やエルサレム王位を巡る出来事など、歴史に名を残す人物です。彼の生涯は、当時のヨーロッパ社会や十字軍遠征の歴史を深く理解する上で重要な要素となっています。

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