ウマシマジ

宇摩志麻遅命（うましまぢのみこと）

宇摩志麻遅命は、古代日本の豪族であり、物部氏、穂積氏、采女氏らの祖とされる人物です。その名は『古事記』に記されており、『日本書紀』では可美真手命（うましまでのみこと）、『先代旧事本紀』では味間見命（うましまみのみこと）と、異なる表記や異称で伝えられています。

生誕と出自

宇摩志麻遅命は、饒速日命（にぎはやひのみこと）と那賀須泥毘古（ながすねひこ）の妹である登美夜毘売（とみやびめ）との間に生まれた子とされています。『先代旧事本紀』によれば、異母兄には天香山命（あめのかぐやまのみこと）（尾張氏の祖）、父は彦湯支命であると記されています。

神武東征での活躍

当初、宇摩志麻遅命は那賀須泥毘古に従っていたとされていますが、神武天皇の東征が開始されると、那賀須泥毘古を討ち、天皇に帰順しました。その後、自らの部族である物部氏を率いて皇城の守護にあたったとされています。

鎮魂祭の起源

『旧事本紀』によれば、神武天皇の即位後、宇摩志麻遅命は饒速日命が遺した10種の天璽瑞宝（あまつしるしのみづたから）を天皇に献上し、それを用いて天皇と皇后の魂を鎮める呪術を行ったと伝えられています。この行為が、後世の鎮魂祭の始まりとされています。この鎮魂祭は、物部神社や彌彦神社、石上神宮などでも行われており、宇摩志麻遅命の霊を鎮めるための儀式として、現代に受け継がれています。

没地と祭祀

物部神社の社伝によると、宇摩志麻遅命は美濃国、越国を平定した後、石見国で没したとされています。現在の物部神社の社殿裏に埋葬されていると伝えられています。越国の平定は、異母兄の天香山命の功績としても知られています。また、「ウマシ」という名前は、良いさまや美しい様子を表す美称であり、実名部分の「マチ」「マテ」「マミ」は、卜占の巧みさを示すものと考えられています。

祭神とする主な神社

宇摩志麻遅命は、以下の神社で祭神として祀られています。

物部神社（島根県大田市）: 宇摩志麻遅命が没したとされる地に建てられています。
味鋺神社（愛知県名古屋市）: 周辺には味鋺古墳群が存在します。
石上神宮（奈良県天理市）: 宇摩志麻遅命が祀った布都御魂剣が、後に宮中から遷されたことが創建のきっかけとされています。
石切剣箭神社（大阪府東大阪市）: 皇紀2年に可美真手命が饒速日尊を奉祀したのが起源とされ、後に可美真手命も祀られるようになりました。

補足

宇摩志麻遅命は、古代日本の歴史において重要な役割を果たした人物であり、その功績は現代にも語り継がれています。特に、鎮魂祭の起源に関わる人物として、神道においても重要な位置を占めています。

参考資料

宮地直一・佐伯有義監修『神道大辞典 縮刷版』、臨川書店、昭和44年 ISBN 4-653-01347-0

関連項目

浜離宮恩賜庭園 - 佐野昭作品の銅像が建てられている。
飛鳥時代以前の人物一覧
大夫

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