ウラル航空178便不時着事故

ウラル航空178便不時着事故：トウモロコシ畑の奇跡

2019年8月15日、モスクワ・ジュコーフスキー空港発シンフェロポリ国際空港行きのウラル航空178便（エアバスA321-211）が、離陸直後に多数の鳥との衝突（バードストライク）に見舞われ、両エンジンがほぼ停止するという緊急事態が発生しました。

事故の概要

離陸後間もなく、機体はカモメの群れと衝突。このバードストライクによって、左エンジンが完全に停止し、右エンジンも推力を大きく失いました。パイロットは、両エンジンが停止した状態での飛行は不可能と判断し、機体を制御できる範囲で、空港近くのトウモロコシ畑への不時着を試みました。この決断が、乗員乗客233人全員の命を救う結果となりました。

この事故は、アメリカで発生した「ハドソン川の奇跡」に匹敵する出来事として、「トウモロコシ畑の奇跡」と呼ばれるようになりました。機体が胴体着陸した場所がトウモロコシ畑であったことが、このニックネームの由来です。負傷者は74人にのぼりましたが、幸いにも死者は一人も出ませんでした。

事故機について

事故を起こした機体は、エアバスA321-211（機体記号VQ-BOZ）でした。2003年に製造され、当初はマイトラベル航空に納入される予定でしたが、その後、キプロス・トルコ航空、アトラスグローバル、ソラリス航空と所有者が変わり、最終的に2011年にウラル航空に売却されました。事故により、機体は全損扱いとなっています。

事故の詳細な経緯

事故当日、ウラル航空178便には、乗員7人と乗客226人が搭乗していました。UTC3時13分にジュコーフスキー空港を離陸した直後、機体はカモメの群れと遭遇。1回目のバードストライクで左エンジンが完全に停止、2回目の衝突で右エンジンも充分な推力を失いました。一部の乗客は、バードストライクの瞬間を動画に収めています。

パイロットは、両エンジンが停止したことを確認した後、トウモロコシ畑への不時着を決断しました。着陸装置を格納したまま胴体着陸を行い、機体は空港から約5.13km地点のトウモロコシ畑に不時着しました。乗客全員が生存し、現場で55人が医師の診察を受け、29人が病院に搬送されました。そのうち6人が入院となりましたが、重傷者は確認されていません。

Flightradar24のデータによると、機体は高度260mまでしか上昇せず、速度も時速310kmから徐々に減速していたことが記録されています。

事故調査

事故機のブラックボックスは無傷で回収され、国家間航空委員会によって調査が行われる予定です。この調査によって、事故の原因が特定されることが期待されます。

事故後の対応

事故の翌日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは、機長と副操縦士にロシア連邦英雄の勲章を授与し、5人の客室乗務員には勇敢勲章を授与しました。この迅速な対応は、乗員たちの勇敢な行動を称えるものでした。

関連事項

この事故は、過去に発生した航空事故といくつかの共通点を持っています。

USエアウェイズ1549便不時着水事故：ハドソン川に着水した事故として知られています。
エチオピア航空604便不時着事故：同様にバードストライクが原因で発生した不時着事故です。
* ウラル航空1383便不時着事故：この事故の4年後に同じ航空会社で発生した不時着事故です。

ウラル航空178便不時着事故は、乗員乗客の命を救った奇跡的な出来事として、航空史に深く刻まれることでしょう。

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