ウヴス・ヌール

オブス・ノール：自然と文化が織りなす湖

オブス・ノールは、モンゴル国最大の湖であり、その北東部はロシア連邦のトゥヴァ共和国にまたがっています。日本ではオブス湖とも呼ばれ、海抜759mに位置し、面積は約3,350平方キロメートルに及びます。湖岸最大の集落は、オブス県の県庁所在地オラーンゴムです。この湖は、かつてこの地域が海であった時代の名残であり、塩分の濃い浅い湖となっています。テス川などの流入河川はありますが、流出河川はありません。

オブス・ノール盆地の特異な生態系

オブス・ノールは、約70万平方キロメートルに及ぶ広大なオブス・ノール盆地の中心に位置しています。この盆地は、ユーラシア大陸において、自然のままのステップが良好に保存されている稀有な地域であり、同時に世界で最も北に位置する砂漠と、最も南に位置するツンドラが共存する場所としても知られています。

盆地内には、ウーレグ・ノール（海抜1,450m）をはじめとする複数の小さな湖が存在し、これらは中央アジアの内海の北に位置することから、渡り鳥にとって重要な中継地となっています。気候は極めて厳しく、夏は47度、冬は-58度と寒暖差が激しいです。しかし、この厳しい環境にもかかわらず、シベリアのタイガとモンゴルのステップという二つの生態系の移行帯にあたり、アルタイ・サヤン地域というエコリージョンの重要な場所となっています。

この地域には、ユキヒョウ、アルガリ、アジア種のアイベックス、スナネズミ、トビネズミ、マダライタチ、マヌルネコなど41種の哺乳類や、カオジロオタテガモ、サカツラガンなど173種の鳥類が生息しています。また、湖にはヨシ原や川の三角州があり、固有種の魚類も確認されています。これらの豊かな自然環境が評価され、1997年にユネスコの生物圏保護区に、2004年にはラムサール条約登録地に指定されました。

人口密度が低い理由と環境保護

この地域の人口密度が低い理由は、産業が発達しておらず、遊牧を主とする周辺住民の伝統が、環境への開発を抑制してきたことにあります。結果として、この地域は手つかずの自然が残されており、その価値は非常に高いものとなっています。

世界遺産としての登録

1993年にロシアが8つの自然保護区を設定し、2003年にはモンゴルがテス川周辺など4つの保護区を設定しました。これら12の保護区は、2003年にユネスコの世界遺産に登録されました。この世界遺産は、中央アジアの自然がほぼ手付かずで残されている点が評価されました。また、スキタイやテュルクの遺跡が多数発見されていますが、登録はあくまで自然遺産としてのものです。

世界遺産登録基準

この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であること。
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいること。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれます。

登録面積

ロシア側: 87,830ヘクタール（緩衝地域: 170,790ヘクタール）
モンゴル側: 333,822.5ヘクタール（緩衝地域: 476,411ヘクタール）

オブス・ノール盆地は、その独特な生態系と文化的価値から、世界的に重要な地域として認識されています。

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