ウートガルザ・ロキ

ウートガルザ・ロキ：北欧神話における幻惑の巨人王

ウートガルザ・ロキ（古ノルド語: Utgarða Loki）は、北欧神話にその名を残す、ヨトゥンヘイムに住まう巨人の王です。ウトガルザ・ロキ、ウトガルド・ロキ、ウトガルデロックなど、様々な名前で呼ばれています。

『スノッリのエッダ』におけるウートガルザ・ロキ

『スノッリのエッダ』の第一部『ギュルヴィたぶらかし』に登場するウートガルザ・ロキは、幻を操る術と、狡猾な策略に長けた存在として描かれています。雷神トールがウートガルズを訪れた際、彼は様々な幻術を用いてトール一行を翻弄しました。

まず、スクリューミルに変装し、遠くの山を自分の頭部だとトールに錯覚させ、ミョルニルで殴打させました。これは、トールの力を試すための策略でした。

その後、トールがロキ、従者のシャールヴィ、レスクヴァを伴ってウートガルザ・ロキの城に到着すると、彼は一行に技比べを提案します。ロギ（野火）、フギ（思考）、海に繋がった角杯、灰色の猫に変身させたヨルムンガンド、そしてエリ（老い）といった、いずれも打ち破ることが極めて困難な相手を差し向け、トール一行を打ち負かしました。しかし、これらも全て幻術であり、ウートガルザ・ロキはトールの強さを認めつつも、それを幻術によって欺いたのです。

『デンマーク人の事績』におけるウートガルザ・ロキ

一方、『デンマーク人の事績』に登場するウートガルザ・ロキ（ウートガルティロキ）は、異なる側面を見せています。

デンマークのゴルモ王が、宝物を貯め込んだゲルートの館を訪問しようとした際、嵐に見舞われ、多くの乗員が餓死寸前に陥りました。乗員たちが神々に祈る中で、ゴルモ王がウートガルティロキに犠牲を捧げて祈ったところ、天候が回復したとされています。

その後、死後の魂の行く末に思い悩むようになったゴルモ王のもとに、トルキルへの敵意を抱く者たちが現れ、トルキルをウートガルティロキのもとに派遣して慰めさせることを提案しました。トルキルは王の命令に従い、巨人たちから教わった通りに旅をし、洞窟の奥にいるウートガルティロキを見つけます。彼は重い鎖で拘束されており、トルキルは彼に会った証拠として髭を1本抜きます。しかし、その髭は異臭を放っていました。帰還したトルキルは、王が夢の内容からトルキルを誤解し殺害しようとしていることを知り、王に旅の一部始終を説明しました。ウートガルティロキの実情を知ったゴルモ王は恥辱のあまり死に、トルキルが持ち帰った髭の悪臭によって周囲の者たちも命を落としました。

このように、『デンマーク人の事績』におけるウートガルザ・ロキは、苦難からの救済を求める人々に力を貸す一方で、恐ろしい存在としても描かれています。

ウートガルザ・ロキの解釈

ウートガルザ・ロキは、北欧神話において、幻術と策略を象徴する存在です。彼の物語は、人間の認識の曖昧さや、外見に惑わされないことの重要性を教えてくれます。また、物語によって異なる姿を見せることは、神話の多面性と解釈の多様性を示唆していると言えるでしょう。

参考文献

サクソ・グラマティクス『デンマーク人の事績』谷口幸男訳、東海大学出版会、1993年、ISBN 978-4-486-01224-5。
V.G.ネッケル他編 『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6

関連項目

ヨトゥンヘイム - ウートガルズ
霜の巨人
* R-TYPE TACTICS - 同名の超大型兵器が登場

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