エアバス A310 MRTT

エアバス A310 MRTT

エアバス A310 MRTT（Multi Role Tanker Transport）は、エアバス社が製造した空中給油および輸送機です。この機体は、エアバス A310-300の改造版であり、特に軍事用途に適した特性を備えています。A310はもともと民間旅客機や貨物機として広く利用されており、フランス空軍やドイツ空軍でも政府専用機として導入されていました。その背景を受けて、エアバスは早くから空中給油機能を持つ機体の開発に着手していました。

来歴

空中給油機能の導入は1995年の技術デモンストレーション機の製作から始まりました。初の正式な発注はドイツ空軍からあり、1999年から2002年にかけて4機が改修されました。改修内容は、機体の構造強化と大型貨物扉の設置であり、当初は空中給油機能は未装備でした。それにもかかわらず、この機体は人員214名または最大36トンの貨物を運ぶ能力を持つため、広範な運用が可能です。

その後、ドイツ空軍はMRT仕様の機体から2機を改修して空中給油機能を付与し、2002年12月には初の給油装置が引き渡されました。2003年12月20日にはこの機体で初飛行が行われ、2004年には空中給油に成功しました。カナダ空軍もこのプロジェクトに参加し、輸送機の改修を進めた結果、ドイツ空軍とカナダ空軍による共同の引渡式が開催されました。

機能

給油能力

A310 MRTTは、空中給油時にプローブアンドドローグ方式を採用しています。機体両翼にはコブハム社製のポッドを装備し、ドイツ空軍では毎分1,500リットルの燃料を給油できる能力を持っています。給油可能な燃料量は、3,000海里進出時に33トン、1,000海里で40トンに達します。また、EADSは新たにフライングブーム方式の給油装置としてARBSを開発し、これを搭載した試作機の成果も好評でした。

輸送能力

輸送機としてのA310 MRTTは、機体を4つに区分し、貨物の積載や人員の輸送が柔軟に行えます。主な積載スペースへのアクセスは機体左側の大型扉から行い、下部スペースは3つに分かれて利用されます。最大積載能力は42トンで、カナダ空軍は32トンでの運用を行っています。

人員輸送時には、ドイツ空軍の基準で214名、カナダ空軍では194名を搭載可能です。また、航空医療輸送にも対応しており、重傷者用ユニット6基、担架56基を搭載できます。2020年には新型コロナウイルス感染症の影響を受け、ドイツ人帰還者の帰国手段としても利用されました。

運用者

現在、A310 MRTTはドイツ空軍に4機、カナダ空軍に2機（CC-150ポラリス）が配備されています。これらの機体は、空中給油および輸送任務において重要な役割を果たしています。

諸元・性能

• - 乗員: 3名（パイロット2名、給油担当1名）
• - ペイロード: 燃料72t、貨物41,600kg
• - 全長: 46.88 m
• - 全高: 15.88 m
• - 翼幅: 43.9 m
• - 空虚重量: 80,000 kg
• - 最大離陸重量: 157,000 kg
• - 動力: GE-CF6-80-C2-A2 ターボファンエンジン、263 kN × 2

性能

• - 最大速度: 885 km/h
• - 巡航速度: 860 km/h
• - 航続距離: 9,600 km（フェリー飛行時11,000 km）
• - 実用上昇限度: 12,500 m
• - 離陸滑走距離: 2,180 - 2,500 m
• - 着陸滑走距離: 1,550 m

このように、エアバス A310 MRTTは航空機の多用途性を確保しながら、空中給油や輸送のニーズを満たす重要な機体として運用されています。

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