エア・ウィスコンシン965便墜落事故

エア・ウィスコンシン965便墜落事故の概要

1980年6月12日、エア・ウィスコンシン965便は、アップルトン国際空港からリンカーン空港へ向かう途中、着陸進入中に豪雨に遭遇し、両エンジンが停止するという深刻な事態に陥りました。この結果、機体は制御不能となり、ほぼ水平な状態で地上に激突、乗員乗客15名のうち13名が死亡するという、エア・ウィスコンシン史上最悪の航空事故となりました。

事故機と乗員

事故機

事故に使用されたのは、フェアチャイルド SA226-TC メトロⅡ（機体記号：N650S）で、1976年に初飛行を行って以来、事故発生までに8,055時間の飛行時間を記録していました。事故前の機体には特に不具合は報告されておらず、その後の調査でも機体の故障を示す証拠は見つかりませんでした。当時、この事故はメトロⅡ型機としては最大の死者数を伴う事故でしたが、現在では4番目に多い事故となっています。

乗員

機長は37歳の男性で、総飛行時間は8,391時間、そのうち同型機での飛行時間は6,000時間でした。副操縦士は28歳の男性で、総飛行時間4,063時間、同型機での飛行時間は143時間でした。

事故の経緯

965便は12時45分にアップルトン国際空港を離陸し、経由地のミネアポリス・セントポール国際空港に14時02分に到着しました。その後、14時20分にリンカーン空港に向けて出発しました。

巡航高度12,000フィート（約3,700メートル）で飛行中、965便は中程度の乱気流と雨雲に遭遇したため、高度8,000フィート（約2,400メートル）まで降下しました。15時36分、オマハレーダー進入管制は965便に6,000フィート（約1,800メートル）までの降下を許可しました。降下中に、965便は激しい豪雨に見舞われ、両エンジンが同時に停止しました。パイロットはエンジンの再始動を試みましたが、機体の姿勢を回復することができず、機首をわずかに下げた状態で地表に激突しました。機体は一度バウンドした後、約88メートル先の地点に再び激突し、約312メートル滑走して停止しました。

事故原因

国家運輸安全委員会（NTSB）は、1980年12月9日に最終報告書を発表しました。報告書では、管制官が激しい降雨を警告できなかったことが事故の主な原因であると結論付けられました。さらに、豪雨によって機載レーダーが正確な降雨量を測定できず、パイロットは危険な地域に向かっていることに気づきませんでした。また、豪雨で両エンジンが停止した際、パイロットは適切な姿勢を維持できなかったことも事故の一因とされました。

安全勧告

NTSBは、事故を受けて15項目の安全勧告を発表しました。主な内容は以下の通りです。

NWS（アメリカ国立気象局）の気象レーダーを航空管制施設に設置すること。
クリーブランド管制でNWS気象レーダーの試験運用を行う計画を立てること。
NWS気象レーダーからの情報を適切に表示するシステムの開発。
新しい気象レーダーと管制レーダーの開発促進。
航空路交通管制センターの設置。
新たな気象分析装置の実験プログラムの実施。
管制官とウェザーコーディネーター間の引き継ぎ内容と状態の再確認。
航空管制の専門家による事故報告書の内容確認。
管制官による気象条件の影響評価、及びそれに基づく飛行経路の調整。
飛行訓練に雨天時のエンジンの性能低下に関する訓練を組み込むこと。
定員が10人以上の航空機への非常口設置の義務付け。
SIGMET（重要気象情報）の送信管理手順の評価、および追加手順の発行。
センターウェザーサービスユニットに関する基準の設定。
航空管制に影響を与える可能性のある気象情報の提供。

関連項目

タカ航空110便緊急着陸事故
ガルーダ・インドネシア航空421便不時着事故
* サザン航空242便墜落事故

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