エイコサペンタエン酸

エイコサペンタエン酸（EPA）について

エイコサペンタエン酸（EPA）は、ω-3脂肪酸の一種であり、20の炭素からなるカルボン酸です。この脂肪酸は、人間を含む後生動物には必須脂肪酸とされ、植物や細菌から合成されるα-リノレン酸を原料に体内で生成されます。オメガ3系の脂肪酸として知られ、時にチムノドン酸とも呼ばれることがあります。

機能と作用

EPAは、身体内で重要な生理活性物質であるプロスタグランジンやトロンボキサン、ロイコトリエンの前駆体となります。これにより、炎症反応や免疫反応に対して調整的な役割を果たすことが確認されています。特に、ω-6系脂肪酸に対するブレーキ役としての機能があります。その結果、心血管疾患予防においても有意義な影響を持っています。

過剰摂取には注意が必要であり、血小板凝集抑制作用が示されていますが、大量摂取は出血傾向を引き起こす場合もあります。さらに、EPAは合成できないため、食品からの摂取が必要不可欠です。一般的に、α-リノレン酸からEPAへの変換効率は10%から15%程度とされています。

食品の利用と医療応用

EPAは、主に魚油や肝油に多く含まれる成分です。具体的には、イワシ、サバ、サケ、ニシンといった青魚に豊富に存在しています。また、EPAは医療用医薬品としても利用されており、商品名にはエパデールやロトリガがあります。これらは高脂血症や閉塞性動脈硬化症の治療に使われています。さらに、健康食品としてサプリメント形態でも展開されています。

研究と臨床試験

様々な研究において、EPAの摂取が脂質代謝を改善することが示されています。例えば、LDLコレステロールや中性[[脂肪]]値の低下が観察されています。神戸大学の研究では、高血圧患者に対してEPAを8週間投与することで血圧の低下が報告されています。しかし、認知症や感染症に対する効果については再現性が欠けるという問題があります。

大規模臨床試験「JELIS」においては、EPAが冠動脈疾患のリスクを低下させる効果が確認されました。さらに、EPAはHDLの酸化を抑制し、機能的なHDLへの変換を促進することが知られています。

体内での存在と影響

残念ながら、EPAは脳内にはほとんど存在しませんが、体内に投与されると速やかにDHAに変換されます。実験では、EPA摂取後のDHAの割合は増加しましたが、逆にEPAは脳内脂質にはほとんど影響を及ぼさないことが分かっています。したがって、DHAが血液脳関門を通過できる一方で、EPAは通過しにくいと考えられています。

食品中のEPAの存在

EPAは主に魚類に含まれる一方で、植物には通常存在しませんが、スベリヒユなどの一部植物で微量に確認されています。EPAを含む医薬品やサプリメントも市販されていますが、エゴマ油やアマニ油にはα-リノレン酸が含まれており、体内でEPAに変換される仕組みがあります。また、魚油は植物プランクトンから供給されるもので、魚自体はEPAを合成できません。

このように、EPAは健康にとって欠かせない成分であり、さまざまな研究が進行中です。今後の研究によって、更なる利用可能性が期待されます。

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