エイズ否認主義

エイズ否認主義とは

エイズ否認主義とは、後天性免疫不全症候群（AIDS、エイズ）の原因が、ヒト免疫不全ウイルス（HIV）ではなく、他の要因にあると主張する考え方、およびそれを支持する科学者を指す言葉です。

背景

1983年にHIVウイルスが発見される以前、エイズの原因は不明であり、様々な仮説が提唱されていました。その後、HIVがエイズの原因であることが科学的に確立されましたが、一部の研究者や患者団体は、HIV以外の原因を主張し続けました。

日本国内でも1988年には「エイズの原因はHIVではない」という論争が科学誌上で報じられ、1993年にはHIVとエイズの関係を疑問視する主張がまとめられています。

主張の内容

エイズ否認主義者の主な主張は以下の通りです。

エイズはHIVによって引き起こされるのではなく、麻薬や血液製剤などの直接作用によって免疫機能が低下することで起きる。
エイズは「一つの病気」ではなく、麻薬常用者のエイズ、血友病患者のエイズ、男性同性愛者のエイズ、アフリカのエイズなど、それぞれ異なる原因によって引き起こされる別々の疾患である。
* 抗HIV抗体が陽性であっても、偽陽性である場合が多い。

彼らは、HIV陰性のエイズが存在すること、ヘロインがリンパ球破壊作用を持つこと、医療従事者の針刺し事故でのエイズ発症率が低いことなどを論拠としています。

主な論者

英語圏では、ピーター・デュースバーグ（カリフォルニア大学バークレー校教授）、キャリー・マリス（PCR法の発明者、ノーベル化学賞受賞者）、ライナス・ポーリング（ノーベル化学賞受賞者）などが知られています。

日本では、山口大学医学部の教授であった柴田二郎が同様の主張を展開しました。また、医学ジャーナリストの永井明がデュースバーグへのインタビューをDAYS JAPANに掲載しています。

批判

エイズ否認主義は、科学的な根拠が乏しく、医学界からは強く批判されています。HIVがエイズの原因であることは、数多くの研究によって確立されており、エイズ治療薬の開発にも繋がっています。エイズ否認主義は、患者の治療を妨げ、感染拡大を招く危険性があるとして非難されています。

南アフリカ共和国などのアフリカ諸国では、エイズ否認主義が陰謀論として批判されています。

現在の状況

1980年代から1990年代にかけては、一部の科学雑誌にもエイズ否認主義の論文が掲載されていましたが、2000年代以降はほとんど見られなくなりました。現在では、エイズ否認主義は科学的な支持を失い、代替医療や陰謀論の一種として扱われることが多くなっています。

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