エイリーク1世 (ノルウェー王)

エイリーク1世（血斧王）

エイリーク1世（ノルウェー語: Eirik Blodøks、古ノルド語: Eiríkr Haraldsson、885年頃 - 954年）は、ノルウェー王（在位:930年-934年）とノーサンブリア王（在位:947年-948年、952年-954年）を兼ねた人物です。父は初代ノルウェー王ハーラル1世で、その治世は短かったものの、殺戮を繰り返したことから「血斧王」の異名で知られています。

生涯

エイリーク1世は、ハーラル1世とユトランドのエイリーク王の娘ラグンヒルドの間に生まれました。アイスランドのサガによれば、12歳からヴァイキングとして活動を始め、遠征先でデンマーク王の娘グンヒルド・ゴームズダターと結婚しました。

父ハーラルの死後、王位を継承しますが、その過程で4人の兄弟を殺害したと伝えられています。しかし、彼の治世は厳しく不人気で、ウェセックス王アゼルスタンの支援を受けた異母弟ホーコン1世（善王）によって王位を追われ、ブリテン諸島に逃れました。

ブリテン島でもヴァイキングとしての活動を続けましたが、アゼルスタンの提案を受け入れノーサンブリアの王となり、ヨークの城に居を構えました。アングロサクソンの年代記によると、947年に王に選任され、その前に家族や同行者と共に洗礼を受けキリスト教徒になったとされています。

サガでは、アゼルスタンがエイリークをスカンジナビア人や侵略者から守るために統治させたとしており、また、エギルのサガではスコットランド人とアイルランド人から守ろうとしたとされています。ノーサンブリアは豊かではなかったため、エイリークはスコットランドやアイリッシュ海一帯を荒らし回り、これは財政的な理由だけでなく、ダブリン王国の王たちに力を示す意味合いもありました。

アゼルスタンの死後、独自に統治しようと試みましたが失敗。イングランド王エドレッドがノーサンブリアを侵略し、リポンのウィルフリッドの大聖堂を焼き払いました。エイリーク軍はイングランド軍の後衛に追いつきカッスルフォードで大量虐殺を行いましたが、エドレッドはノーサンブリアを滅ぼすと脅し、住民はエイリークに背きイングランド王に賠償を行いました。その後、ノーサンブリアの人々はオラフ・ストリクソンを新たな支配者として迎え、954年にエイリークは再度エドレッドによって退位させられ、イングランドがノーサンブリアの主導権を握りました。以降、ヨークとノーサンブリアはイングランドに吸収されました。

エイリークはヴァイキングとしての活動中に戦死しました。彼の最期は資料によって異なり、『ヘイムスクリングラ』や『ノルウェー古代列王史』ではノーサンブリア、『ヒストリア・ノルベジエ』ではヒスパニアで戦死したとされています。サガによれば、ヘブリディーズの5人の王とオークニーの伯爵2人を伴っていた際、オラフ・クアランの息子マッカスに待ち伏せされ殺害されたとされています。

親族と血縁関係

妻グンヒルドは、邪悪な魔女としてサガで頻繁に登場します。彼女はエイリークの死後に彼を賞賛するスカルド詩を作らせました。その詩『エイリークの歌』では、エイリークはスタインモアでの死後、北欧の古い信仰における主神オーディンの元に迎え入れられたとされています。

エイリークの死後、息子たちはノルウェー王の即位に成功し、叔父であるホーコン善王と戦い、最終的に彼を倒しました。息子たちの中には、ガムリのように戦死した者もいましたが、ハーラル灰衣王、シグルズ、グンロズは生き残り、ホーコンが治めていたノルウェー沿岸部を支配しました。母グンヒルドも政治に関与し、「国母」と呼ばれました。

資料

13世紀に主にアイスランドで成立したサガでは、エイリークはバイキングの中でも野蛮で残忍な暴君として描かれています。一方、同時代のアングロサクソンの年代記では、ややその描写は控えめです。ノルウェーでの彼の生活については、サガに多くを依存しており、この資料は10世紀初期のものとしては信憑性が低いものの、基本的な概要は間違っていないとされています。Williamsの資料では、トールフィン・スカルスプリッターと共に、典型的なヴァイキング戦士として描写されています。

脚注

注釈

出典

参考文献

原典資料

『ヘイムスクリングラ』の『ハーラル美髪王のサガ』、『ホーコン善王のサガ』、『灰色マントのハーラル王のサガ』
スノッリ・ストゥルルソン『ヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 -』 1巻、谷口幸男訳、プレスポート〈1000点世界文学大系 北欧篇3〉、2008年10月。
『ヒストリア・ノルベジエ』
成川岳大「翻訳 『ヒストリア・ノルベジエ (ノルウェー史) Historia Norwegie』本文及び解題」『北欧史研究』第26号、バルト＝スカンディナヴィア研究会、pp. 68-100頁、2009年9月。

二次資料

ストレム, フォルケ『古代北欧の宗教と神話』菅原邦城訳、人文書院、1982年10月。

関連項目

エイリークルの言葉（エイリークの歌）
ノーサンブリア王朝の一覧

外部リンク

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