エクリプス系

エクリプス系：サラブレッドの主流を担う血統

エクリプス系は、サラブレッドの父系を語る上で欠かせない、極めて重要な系統です。その起源は、18世紀初頭にイギリスに輸入されたダーレーアラビアンというアラブ種馬に遡ります。ダーレーアラビアンは優れた競走馬を輩出しましたが、その血統が現在まで続くのは、ダーレーアラビアンの全弟であるバートレットチルダーズを通じてです。そして、バートレットチルダーズから数代を経て、18世紀後半に現れたのがエクリプスです。

エクリプスは18戦無敗という驚異的な戦績を誇り、種牡馬としても大きな成功を収めました。しかし、同時代の強豪種牡馬の存在により、リーディングサイアーにはなれませんでした。それでも、エクリプスの子孫は爆発的に増加し、サラブレッドの主流血統へと成長していきました。

エクリプス系は、その後の発展において、ポテイトーズとキングファーガスという2頭の種牡馬が特に重要な役割を果たしました。初期にはキングファーガス系が優勢でしたが、次第にポテイトーズ系、そしてその子孫であるタッチストンやストックウェルが台頭し、サラブレッド界を席巻するようになります。19世紀末には、タッチストン系とストックウェル系がサラブレッドの大部分を占めるようになりました。

19世紀末から20世紀初頭にかけては、キングファーガス系から出たセントサイモンが一時的に他の系統を圧倒する勢いを見せましたが、その後衰退。20世紀中頃以降は、ストックウェルの後裔であるファラリス系が圧倒的な勢力を誇るようになりました。現在では、サラブレッドの9割以上がファラリス系の血を引いていると言われています。

エクリプス系の隆盛は、Y染色体ハプロタイプという遺伝子レベルの分析でも裏付けられています。エクリプス系はハプロタイプ2またはハプロタイプ3に分類され、ハプロタイプ3は特にファラリス系で多く見られます。このハプロタイプ3は、ホエールボーンという馬で発生した突然変異が、ファラリス系に広まったものと考えられています。

日本においても、エクリプス系は圧倒的なシェアを占めています。2014年のデータでは、日本で生産されたサラブレッドの99.85％がエクリプス系に属し、残りはマッチェム系のみでした。この数値からも、エクリプス系がサラブレッドにおける主流血統であることが明確に示されています。

エクリプス系の歴史を紐解くと、ダーレーアラビアンからエクリプス、そしてポテイトーズ、キングファーガス、セントサイモン、ファラリスへと、名だたる競走馬や種牡馬が数多く登場します。それぞれの馬の活躍が、エクリプス系の発展に大きく貢献し、現在のサラブレッドの礎を築き上げたと言えるでしょう。

エクリプス系の主要な系統と競走馬

エクリプス系は、その歴史の中で、数多くの枝分かれを生み出しました。ここでは、主要な系統をいくつか紹介します。

ポテイトーズ傍系: ポテイトーズを祖とする系統。タッチストン、ストックウェルといった名種牡馬を輩出しました。
バードキャッチャー傍系: バードキャッチャーを祖とする系統。
ストックウェル傍系: ストックウェルを祖とする系統。ファラリスはこの系統に属します。
ベンドア系: ベンドアを祖とする系統。
リーミントン系: リーミントンを祖とする系統。
キングファーガス傍系: キングファーガスを祖とする系統。セントサイモンはこの系統に属します。
マーキュリー系: マーキュリーを祖とする系統。
ジョーアンドリュース系: ジョーアンドリュースを祖とする系統。

これらの系統以外にも、数多くの支流が存在し、複雑に絡み合いながらサラブレッドの世界を形作っています。それぞれの系統に属する競走馬たちの活躍が、エクリプス系の歴史を彩り、現代のサラブレッドへとつながっています。 エクリプス系の血統は、サラブレッドの成功に不可欠な要素であり、その歴史と影響力は計り知れません。

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