バードキャッチャー

アイルランドが生んだ英雄：競走馬バードキャッチャー

バードキャッチャー(1833-1860)は、アイルランドを代表する競走馬にして、種牡馬として多大なる成功を収めたサラブレッドです。19世紀におけるアイルランド競馬史に燦然と輝くその名は、多くのサラブレッドへの影響と、幾多のドラマを物語っています。

奇跡の生還と華麗なる競走生活

バードキャッチャーはブラウンズタウン牧場で生まれ、ウィリアム・ディズニーによって購入されました。1歳時にはウイルス性肺炎という生死をさまよう重病を患い、安楽死も検討されたほどでしたが、奇跡的に回復を遂げます。この経験から「奇跡の馬」と呼ばれるようになった逸話は、彼の生涯を象徴する出来事です。

競走馬として活躍した2歳から4歳の間、彼はアイルランドのカラ競馬場で全15戦を戦い抜きました。その輝かしい戦績は、マドリッドステークス、カスニッシェとのマッチレース、ミルタウンステークス、ピールカップ、キルデアステークス、ロイヤルプレート、ウェリントンステークスといった数々の重賞競走での勝利に裏付けられています。7勝という記録は、彼の類まれな能力と強靭さを証明しています。

偉大な種牡馬としての成功と悲劇的な最期

現役引退後は種牡馬となり、イギリスとアイルランド各地で活躍しました。彼の産駒からは、7頭ものクラシックホースが輩出されました。その中には、セントレジャーステークスを制覇したザバロンがおり、彼は後の大種牡馬ストックウェルの父となり、その血統は現代競馬にまで連綿と受け継がれています。また、オックスフォードはブランドフォード系の父方祖先として、その血統は重要な役割を果たしました。

バードキャッチャーは、1852年と1856年の2度にわたりイギリスのリーディングサイアーに輝き、その種牡馬としての能力の高さを示しました。しかしながら、27歳を迎えた頃、種付けができなくなり、馬主は警察に連絡して銃で処分するという悲劇的な最期を遂げます。この出来事はイギリスで非難の声を呼び起こしましたが、当時のアイルランドでは馬を銃で処分することは珍しいことではなかったと言われています。

特徴的な容姿と受け継がれた血統

バードキャッチャーは、15.3ハント(約155cm)という当時としては標準的な体高で、均整の取れた美しい体格をしていました。栗毛の毛色に白い白斑を持ち、この白斑は「ベンドア斑」または「バードキャッチャー斑」と呼ばれ、彼の後継馬であるザテトラークやストックウェルにも受け継がれました。この白斑は、19世紀のサラブレッドには比較的多く見られましたが、20世紀中頃以降は稀なものとなっています。

主な産駒

ザバロン (The Baron)：セントレジャーステークス優勝、ストックウェルの父
チャンティクリア (Chanticleer)：ドンカスターカップ優勝
ダニエルオルーク (Daniel O'Rourke)：エプソムダービー優勝
ソングストレス (Songstress)：オークス優勝
バードオンザウィング (Bird on the Wing)
ナイトオブセントジョージ (Knight of St. George)：セントレジャーステークス優勝
ハベナ (Hebena)：1000ギニー優勝
マンガニーズ (Manganese)：1000ギニー優勝
ウォーロック (Warlock)：セントレジャーステークス優勝
ソーンタラー (Saunterer)：グッドウッドカップ優勝
* オックスフォード (Oxford)

バードキャッチャーの生涯は、奇跡と栄光、そして悲劇が交錯するドラマチックなものでした。しかし、彼の血統は現代競馬にまで大きな影響を与え続け、アイルランド競馬史に永遠に刻まれた偉大な名馬として記憶されています。

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