エドマンド・モーティマー (第3代マーチ伯)

エドマンド・モーティマー：中世イングランドの貴族、マーチ伯の生涯

エドマンド・モーティマー（Edmund Mortimer, 1352年2月1日 - 1381年12月27日）は、14世紀のイングランドにおいて重要な役割を果たした貴族です。第3代マーチ伯爵として、彼はその家系の地位を高め、イングランド王室との繋がりを深めました。彼の生涯は、当時の政治的駆け引きと貴族社会の複雑さを反映しています。

生涯

エドマンドは、第2代マーチ伯ロジャー・モーティマーを父に、初代ソールズベリー伯ウィリアム・モンタキュートの娘フィリッパを母に持ちます。1360年に父の死によりマーチ伯位を継承しました。1368年には、エドワード3世の三男であるクラレンス公ライオネル・オブ・アントワープの娘フィリッパと結婚。この結婚により、クラレンス公の遺領と妻の母エリザベス・ド・バラからアルスター伯爵領を継承し、王家の一員としての地位を確立しました。この結婚は、後の薔薇戦争におけるヨーク家の王位継承の主張の根拠となります。

エドマンドは、フランスやスコットランドへの外交使節としても活動しました。1376年の善良議会では、ジョン・オブ・ゴーントと対立する批判派の指導者の一人として名を連ねます。この議会において、彼は執事のピーター・ド・ラ・メアーを保護し、庶民院議長として政権を批判する彼を支援しました。1377年にエドワード3世が死去し、孫のリチャード2世が即位すると、エドマンドは政治顧問団の一員に選ばれ、戴冠式では王冠を支えるという重要な役割を担いました。

1379年、エドマンドはアイルランド総督に任命され、アイルランド北部のアルスターに赴任します。西部平定を企図し、南西部のコークへ進軍しましたが、1381年、浅瀬を渡る途中で溺死するという不慮の死を遂げました。享年29歳。彼の爵位は、息子のロジャーが継承しました。

子女

妻フィリッパとの間には、以下の子供たちがいます。

エリザベス・モーティマー - ヘンリー・パーシー（ホットスパー）と結婚
ロジャー・モーティマー - 第4代マーチ伯
フィリッパ・モーティマー - 第17代アランデル伯爵リチャード・フィッツアランと結婚

また、ジョン・モーティマーという庶子もいました。

エドマンド・モーティマーの生涯は、中世イングランドの貴族社会における権力、政治、そして家族関係の複雑さを物語っています。彼の王室との繋がりは、後の薔薇戦争におけるヨーク家の王位継承の正当性を主張する上で重要な役割を果たしました。若くして亡くなったものの、彼の遺した影響は、その後のイングランドの歴史に深く刻まれています。

参考文献

青山吉信編『世界歴史大系 イギリス史1 -先史～中世-』山川出版社、1991年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

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