エフケ

エフケ（Efke）は、クロアチアの写真用品メーカー、フォトケミカ・ノヴァ（Fotokemika-Nova d.o.o.）が展開していた写真フィルム、印画紙、現像薬品のブランドです。特に白黒フィルムに強みを持ち、その製品は独特の特性から、写真愛好家の間で一定の評価を得ていました。

エフケの歴史と特徴

エフケのフィルムは、製造元のフォトケミカが1970年にドイツのアドックス（アドックス・デュポン）からフィルム製法の権利を取得したことに端を発します。この製法は、アドックスが1940年代に開発したもので、エフケのフィルムは、この伝統的な技術を継承していました。

エフケフィルムの特徴として、金属銀の含有量が多いことが挙げられます。これにより、広いラティチュード（露光寛容度）を実現し、多少の露出ミスがあっても良好な結果が得られるため、初心者でも扱いやすいとされていました。また、独特の階調表現は、多くの写真家から支持を集めました。

特筆すべき点として、エフケはコダックが1995年に製造を終了した127フィルム、いわゆる「ベスト判フィルム」を継続して製造販売していたことが挙げられます。当時、127フィルムの製造を続けていたメーカーは少なく、エフケはクラシックカメラ愛好家にとって貴重な存在でした。その他、ドイツのマコがローライブランドで、カナダのブルーファイア・ラボラトリーズが「ブルーファイア・ムラノ160」というカラーの127フィルムを製造販売していましたが、エフケの127フィルムは、その中でも広く知られていました。

日本での展開

エフケ製品は、日本国内ではあまり流通していませんでしたが、127フィルムについては、クラシックカメラを扱う一部の専門店で長らく取り扱われていました。その後、かわうそ商店（北海道斜里郡斜里町）が正規輸入代理店となり、127フィルム以外の多くのフィルムも日本国内で入手可能になりました。

製造終了

しかし、2012年、製造設備の修理が不可能となり、エフケのフィルムと印画紙はすべて出荷を終了しました。現在では、エフケの製品を入手することは困難ですが、過去に製造されたフィルムは、中古市場などで時折見られます。

主な製品

エフケは、様々な種類の白黒フィルムを製造していました。主な製品は以下の通りです。

白黒ネガフィルム

エフケKB25/35mm - 135フィルム、ISO25
エフケR25/120 - 120フィルム、ISO25
エフケPL25M - シートフィルム、ISO25
エフケKB50/35mm - 135フィルム、ISO50
エフケR50/120 - 120フィルム、ISO50
エフケPL50M - シートフィルム、ISO50
エフケKB100/35mm - 135フィルム、ISO100
エフケR100/120 - 120フィルム、ISO100
エフケR100/127 - 127フィルム、ISO100
エフケPL100M - シートフィルム、ISO100
エフケKB400/35mm - 135フィルム、ISO400
エフケIR820/35mm - 赤外線フィルム、135フィルム、ISO100
エフケIR820/120 - 赤外線フィルム、120フィルム、ISO100
エフケIR820/127 - 赤外線フィルム、127フィルム、ISO100
エフケIR820 - 赤外線フィルム、シートフィルム、ISO100

印画紙

Emaks
* Varycon

フォトケミカについて

エフケの製造元であるフォトケミカ・ノヴァは、1947年にユーゴスラビア社会主義連邦共和国（現在のクロアチア）のザグレブに設立された会社です。当初は、白黒写真用の印画紙、現像薬品、写真機の製造を手掛けていました。1952年にはフィルム工場を開設し、白黒フィルムの製造を開始。その後、X線フィルムや映画用フィルム、マイクロフィルムなど、幅広い製品を手がけていました。

1970年、アドックスからフィルム製法の権利を取得し、1991年のクロアチア独立後も、写真製品の製造を続けました。2003年には、現在の「フォトケミカ・ノヴァ有限責任会社」が設立され、事業を継承しました。

まとめ

エフケは、その独特なフィルム特性と、127フィルムの製造を継続していたという点で、写真史に残るブランドの一つです。現在は製造を終了していますが、その歴史と技術は、多くの写真愛好家によって語り継がれています。

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