エモーショナル・レスキュー (曲)

エモーショナル・レスキュー：ローリング・ストーンズのディスコ・ヒットと制作秘話

ローリング・ストーンズの代表曲の一つ「エモーショナル・レスキュー (Emotional Rescue)」は、1980年に同名アルバムからの先行シングルとしてリリースされた楽曲です。ミック・ジャガーとキース・リチャーズの共作で、全米3位、全英9位を記録するなど商業的にも大きな成功を収めました。

この曲は、先行シングルとして大ヒットした「ミス・ユー」の流れを汲むディスコ調のナンバーとなっています。しかし、そのサウンドとは裏腹に、制作過程やメンバーの評価には波乱がありました。楽曲の主要部分を手がけたのはジャガーであり、彼はエレクトリックピアノを弾きながら、スタジオにいたチャーリー・ワッツ、ロン・ウッドと共にベースとなるトラックを録音しました。ウッドがベース、ワイマンがシンセサイザーを担当するなど、ストーンズのメンバーそれぞれの持ち味が活かされています。

特に注目すべきは、ジャガーがほぼ全編にわたってファルセットで歌っている点です。当時、ファンの間では大きな衝撃を与えたこの歌唱法は、ジャガー自身によるとドン・コヴェイからの影響を受けているとのこと。彼はインタビューで、レゲエ風の歌唱を取り入れたことや、5分43秒という長さの中で様々な試みを行ったことを語っています。

しかし、このファルセットボーカルについては、メンバー全員が好意的に受け止めていたわけではありませんでした。共同プロデューサーのクリス・キムジーは「気取っている」と評し、リチャーズも「私たちのベストとは呼べない」とコメントしていることから、メンバー間でも意見が分かれていたことがわかります。

「エモーショナル・レスキュー」は、イギリスで9位、アメリカで3位、カナダでは1位を記録するなど、世界的にヒットを飛ばしました。ただし、プロモーション用シングルでは演奏時間が1分以上短縮されており、2002年リリースのベストアルバム『フォーティ・リックス』にもこの短縮版が収録されています。多くのベストアルバムに収録されている一方で、長らくライブでは演奏されておらず、初披露は2013年という遅咲きぶりも特徴です。デヴィッド・マレット監督によるミュージックビデオも制作され、現在もストーンズの公式YouTubeチャンネルで視聴可能です。

楽曲のレコーディングには、ミック・ジャガー（ボーカル、エレクトリックギター、エレクトリックピアノ）、キース・リチャーズ（エレクトリックギター）、ロン・ウッド（エレクトリックベース）、ビル・ワイマン（シンセサイザー）、チャーリー・ワッツ（ドラムス）といったストーンズの主要メンバーに加え、ボビー・キーズ（サックス）、マイケル・シュリーヴ（パーカッション）も参加しています。

「エモーショナル・レスキュー」は、商業的な成功を収めた一方で、メンバー間の意見の相違や、ジャガーの挑戦的な歌唱法など、様々な要素が絡み合った興味深い楽曲と言えるでしょう。その背景を知れば知るほど、この曲が持つ魅力は一層増していくはずです。ヒット曲の裏側にある、クリエイターたちの葛藤や創造性を垣間見ることができる、貴重な作品と言えるでしょう。

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