エリス (準惑星)

エリス：太陽系外縁の準惑星

エリス（Eris）は、太陽系外縁に位置する準惑星であり、冥王星型天体の一つです。準惑星の中では質量が最大で、半径は冥王星に次いで2番目に大きい天体です。太陽から非常に離れた場所を公転しており、その軌道は大きな楕円形を描いています。この天体の発見は、惑星の定義に関する議論を巻き起こし、結果として「準惑星」という新しい分類が設けられるきっかけとなりました。衛星としてディスノミアを伴っています。

発見

エリスは、2005年1月5日にマイケル・ブラウン率いる観測チームによって発見されました。この発見は、2003年10月21日に撮影された画像の中から見つけ出されたものです。発見当初、エリスは冥王星よりも大きいと考えられていたため、「第10惑星」と表現されることもありました。しかし、国際天文学連合（IAU）による惑星の定義の見直しにより、エリスは準惑星に分類されることになりました。

観測チームは、以前より太陽系外縁部の天体を体系的に探索しており、過去にもいくつかの大型天体を発見しています。エリスの発見につながった画像は、パロマー天文台の望遠鏡で定期的に観測されたものでした。エリスは夜空の中をゆっくりと移動するため、当初は発見されませんでしたが、過去のデータを再分析することでその存在が明らかになりました。

名称

発見当初、エリスは仮符号「2003 UB313」で呼ばれていましたが、正式な名称は、ギリシア神話に登場する不和と争いの女神「エリス」にちなんで名付けられました。また、発見当初は「Xena」という愛称でも知られていました。この名称は、アメリカのテレビドラマの主人公に由来する非公式なものでした。正式名称「エリス」は、2006年9月13日に国際天文学連合によって承認されました。

ブラウンは、準惑星であるエリスを、惑星と同様に神話に由来する名前で命名するに値すると考えました。そして、エリスの発見が惑星の定義に関する議論を引き起こしたことから、争いの女神エリスの名がふさわしいと判断したのです。

分類

エリスは、準惑星に分類される太陽系外縁天体であり、その軌道特性から散乱円盤天体（SDO）にも分類されます。散乱円盤天体は、太陽系形成時に海王星との重力相互作用によって、エッジワース・カイパーベルトよりも遠くに散乱された天体です。エリスは、特に大きな軌道傾斜角を持つことで知られています。当初は「第10惑星」と呼ばれましたが、2006年8月24日にIAUによって惑星の定義が定められた結果、エリスは冥王星などとともに準惑星という新しい分類に属することになりました。

さらに、2008年6月には、IAUによって海王星の外側にある準惑星を「冥王星型天体（プルートイド）」とすることが決定しました。現在、冥王星型天体には、冥王星、エリス、マケマケ、ハウメアの4つが分類されています。

軌道

エリスの公転周期は約560年です。近日点では太陽から約38.5 au（約57.6億km）まで近づき、遠日点では約97.5 au（約145.8億km）まで離れます。軌道は黄道面に対して大きく傾いており、その角度は約44度に達します。エリスは非常に歪んだ楕円軌道を公転しており、その軌道離心率は大きいです。発見された当初、エリスは太陽から約97 auの距離にあり、長周期彗星や探査機を除くと、太陽系内の最も遠い既知の天体でした。ただし、2018年にはさらに遠い天体が発見されています。

物理的特徴

エリスの直径は2,326 ± 12 kmと測定されています。これは冥王星よりもわずかに小さいですが、質量は冥王星よりも約26%大きいとされています。密度は2.43 ± 0.05 g/cm³であり、冥王星よりも高いことから、主に岩石で構成されていると考えられます。また、表面のアルベド（反射率）は0.96と非常に高く、表面は氷で覆われていると推測されています。

エリスの自転周期は約25.9時間であり、地球に近い周期です。しかし、エリスの自転周期についてはまだ意見が分かれています。表面温度は、太陽との距離によって30～56K（-243.2～-217.2℃）の間で変動すると推定されています。

内部構造については、放射性崩壊による内部加熱モデルから、マントルと核の境界に液体の水の内部海が存在する可能性が示唆されています。

表面と大気

エリスの表面はメタンの氷で覆われていることが分かっています。また、冥王星や海王星の衛星トリトンと同様に、メタンの存在が確認されています。表面の色はほとんど白色であり、やや赤みを帯びた冥王星とは対照的です。エリスが太陽に近づく際には、表面の氷が昇華する可能性もあります。揮発性の高いメタンが表面に存在することは、エリスが常に低温状態であるか、メタンの内部供給源が存在することを示唆しています。

衛星

エリスには「ディスノミア」と呼ばれる衛星が存在します。ディスノミアは、エリスの周りを公転しており、この衛星の存在によってエリスの質量をより正確に測定することが可能になりました。ディスノミアの名称は、ギリシア神話のエリスの娘で不法の女神「デュスノミア」に由来しています。発見当初は、エリスの愛称「Xena」にちなんで「Gabrielle」と呼ばれていました。

探査

探査機ニューホライズンズによる冥王星への接近探査が成功した後、太陽系外縁天体の探査に関する研究が行われています。エリスも探査候補として評価されており、2032年または2044年に探査機を打ち上げると、25年弱でエリスに到達する可能性があると計算されています。

まとめ

エリスは、太陽系外縁に位置する準惑星であり、その発見は惑星の定義に関する議論を巻き起こしました。質量は準惑星の中で最大、半径は2番目に大きく、太陽から非常に離れた場所を公転しています。衛星ディスノミアを持ち、表面はメタンの氷で覆われています。今後の探査計画によって、エリスの謎がさらに解き明かされることが期待されます。

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