エリーナ・ガランチャ:ラトビアが生んだ世界的なメゾソプラノ歌手
エリーナ・ガランチャ(Elīna Garanča)は、
1976年9月16日、
ラトビアの
リガで生まれたメゾ
ソプラノ歌手です。その才能は世界中で高く評価され、主要な歌劇場で数々の重要な役を演じています。
音楽一家に育まれた才能
ガランチャは音楽一家に育ちました。父ヤーニスは合唱
指揮者、母アニタは声楽家で、
ラトビア音楽アカデミーの教授、
ラトビア文化アカデミーの準教授、
ラトビア国立歌劇場の声楽教師、そして声楽の個人教師という経歴を持っています。3歳年上の兄ヤーニスも音楽教育を受けましたが、現在はインタラクティブ・コンピュータ・ビジュアル・メディア・アーティスト、コンサルタントとして活躍しています。エリーナは5歳からピアノ、音楽理論、
ソルフェージュの教育を受け、「音楽とステージが私を捉えた。私は他に何かを想像することはできませんでした」と語るように、幼い頃から音楽の道に進むことを決意していました。
プロとしてのキャリア
1996年、ガランチャは
ラトビア音楽アカデミーに入学し、セルゲイ・マルティノフに声楽を師事。その後、
ウィーンでイリナ・ガブリロヴィッチ、
アメリカ合衆国でヴァージニア・ゼアーニに師事しました。
1999年には、
ヘルシンキのミリアム・ヘリン国際声楽コンクールで優勝。プロとしてのキャリアを
マイニンゲンの
マイニンゲン州立劇場でスタートさせ、その後フランクフルト歌劇場に移籍しました。
2003年には、マスカーニの『
カヴァレリア・ルスティカーナ』のローラ役で
ウィーン国立歌劇場にデビューしました。
国際的な活躍
2003年の
ザルツブルク音楽祭で、
ニコラウス・アーノンクール指揮によるモーツァルトの『
皇帝ティートの慈悲』のプロダクションでアンニオを歌い、国際的な注目を集めました。その後、
ウィーン国立歌劇場での『ウェルテル』のシャルロット役、『
コジ・ファン・トゥッテ』のドラベッラ役、2005年の
パトリス・シェロー演出による
パリのプロダクションでの同役など、重要な役を次々と演じ、
ドイツ・グラモフォンとのレコーディング契約も結びました。
2006年には『
皇帝ティートの慈悲』に戻り、今度はセスト役を歌っています。
2007年には、コヴェント・ガーデンにドラベッラ役でデビュー。
アンナ・ネトレプコ、ラモン・ヴァルガス、リュドヴィク・テジエ、
マルコ・アルミリアート指揮の南西ドイツ放送交響楽団と共にバーデン=バーデン祝祭劇場のサマー・ガラコンサートに出演し、その模様はドイツのテレビ局で中継され、200万人が視聴しました。
2008年1月12日、ガランチャは
ニューヨークの
メトロポリタン歌劇場にロッシーニの『
セビリアの理髪師』のロジーナ役でデビュー。
ニューヨーク・タイムズのバーナード・ホランドは、「ガランチャ女史は本物である(...)現代の歌唱技術をロッシーニの
19世紀初期における速さ、軽さ、アスレチックなアーティキュレーションを重要視する困難に適応させ、ステージ上で隈なく快適に聴けたのはガランチャ女史ひとりだった。リリックなパッセージが歌い出され、せわしないエピソードは完全に手の内にあった」と評しました。ガランチャは
メトロポリタン歌劇場の
2010年プロダクション『カルメン』の主役を歌いました。2011年ラインガウ音楽祭のオープニングコンサートでは、
パーヴォ・ヤルヴィ指揮のhr交響楽団とアルバン・ベルクの『7つの初期の歌曲』をエーバーバッハ修道院で演奏しました。
私生活
2006年、
指揮者のカレル・マーク・チチョンと結婚。2011年
9月30日に長女キャサリン・ルイーズ、2014年1月10日に次女クリスティーナ・ソフィーが誕生しています。
受賞歴
1999 - ミリアム・ヘリン国際声楽コンクール1位
2000 -
ラトビア音楽大賞
2006 - ヨーロッパ文化賞 音楽部門
2007 - 三つ星勲章
2007 / 2009 - ECHOクラシック 最優秀女性歌手
2010 - ミュージカルアメリカ賞 最優秀
歌手
2011 - MIDEM(国際音楽産業見本市)カンヌクラシック賞 最優秀アーティスト、ラトビア音楽大賞
主な役柄
ガランチャは、オペラ界で数多くの主要な役を演じてきました。以下はその一部です。
モーツァルト:『
フィガロの結婚』ケルビーノ
モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』ドラベッラ
モーツァルト:『
皇帝ティートの慈悲』アンニオ、セスト
ロッシーニ:『セビリアの理髪師』ロジーナ
ロッシーニ:『
チェネレントラ』アンジェリーナ
ベッリーニ:『ノルマ』アダルジーザ
ドニゼッティ:『
アンナ・ボレーナ』ジョヴァンナ・シーモア
マスネ:『ウェルテル』シャルロット
ビゼー:『カルメン』カルメン
* R・シュトラウス:『
ばらの騎士』オクタヴィアン