エルズルム県

エルズルム県：歴史と自然が織りなすトルコの地

エルズルム県は、トルコ東アナトリア地方に位置し、広大な面積と多様な地形を持つ県です。県都はエルズルム市で、多くの県と隣接しており、その地理的な特徴は、歴史と文化、そして経済活動に深く影響を与えています。

地理

エルズルム県は、トルコで4番目に大きな県であり、その大部分が標高の高い高原や山岳地帯で占められています。高原は平均して2000mを超え、山岳地帯では3000mを超える場所も存在します。これらの山々は、パランドケン山脈やシャハーヴェルト山脈などの南方山脈と、Mescit山脈やKargapazarı山脈などの北方山脈に分かれており、その間にはエルズルム盆地とハサンカレ盆地という二つの盆地が広がっています。

気候は、長く厳しい冬と、短く過ごしやすい夏が特徴で、年間を通しての寒暖差が大きいです。年間降水量は比較的少なく、冬には雪が降り積もります。

この地域はステップ気候に属し、県土の大部分は肥沃な土地で覆われています。森林はそれほど多くなく、主にヨーロッパアカマツと楢が見られます。また、東部はアラス川、西部はカラス川、北部はÇoruh川の流域であり、多くの天然湖が存在します。特に有名なのは、ウズンデレ滝に水を供給するトルトゥム湖で、その流れを利用した水力発電所も存在します。さらに、人工湖もいくつかあります。

歴史

エルズルム県には、ヒッタイト時代から人が居住しており、古代から重要な地域でした。1915年のアルメニア人虐殺まで、この地域はアルメニア人共同体の影響下にありました。ローマ時代にはエルゼンという地域に編入され、ビザンチン帝国時代には国境の要としてテオドシオポリスという町が築かれました。この町は交易の要所として、またペルシャとの重要な接点として、しばしば攻撃を受けました。

11世紀にはセルジューク朝によって侵略され、古都エルゼンは破壊されましたが、テオドシオポリスは生き残りました。その後も、セルジューク朝やグルジア人との戦いを経て、13世紀にはモンゴルに破壊され、その後も統治者がめまぐるしく変わりました。1514年にはオスマン帝国に統合されました。

オスマン帝国時代、エルズルムは軍事基地として利用され、17世紀にはイランの脅威や反乱に悩まされました。19世紀にはロシア帝国に一時的に占領されましたが、アドリアノープル条約でトルコに返還されました。第一次世界大戦では、カフカース戦線の主戦場となり、ロシア軍に占領された後、ブレスト＝リトフスク条約によってトルコに戻りました。トルコ独立戦争でも重要な拠点となり、1924年に県となりました。1993年にはエルズルム市が大都市自治体に指定され、2012年にその範囲は全県に拡大されました。

下位行政区

エルズルム県には、以下の20の下位行政区があります。

アシュカレ（Aşkale）
アズィズィイェ（Aziziye）
チャト（Çat）
フヌス（Hınıs）
ホラサン（Horasan）
イスピル（İspir）
カラチョバン（Karaçoban）
カラヤズ（Karayazı）
キョプリュキョイ（Köprüköy）
ナルマン（Narman）
オルトゥ（Oltu）
オルル（Olur）
パランデケン（Palandöken）
パスィンレル（Pasinler）
パザルヨル（Pazaryolu）
シェンカヤ（Şenkaya）
テクマン（Tekman）
トルトゥム（Tortum）
ウズンデレ（Uzundere）
ヤクティイェ（Yakutiye）

経済

エルズルム県の経済は、農業、牧畜、鉱業、そして近年では観光に支えられています。耕地面積は約18.5%で、主に穀物が生産されています。森林面積は8.8%で、林業も行われています。

この県には80以上の工場がありますが、多くは中小企業であり、生産量や雇用数は限られています。また、操業コスト高により停止している工場も少なくありません。

牧畜はかつて盛んでしたが、輸入規制緩和によって衰退しました。しかし、食肉加工業の大規模な工業団地が建設され、復興が期待されています。その他にも、養蜂やマス養殖などの食品産業も存在します。

地下資源としては、銅、クロム、鉛、亜[[鉛]]などが採掘されていますが、埋蔵量は少なく、枯渇が懸念されています。また、褐炭が多く埋蔵されていますが、硫黄や灰分を多く含むため、工業用途に限られています。その他、マグネサイト、耐火粘土、石膏、マンガン、珪藻土、大理石、岩塩、真珠岩なども採掘されています。

地熱資源も存在しますが、温泉としての利用が主です。

1997年のGDPは約1160億ドルで、トルコ全体の1%程度を占めています。交通網としては、舗装されていない高速道路やエルズルム国際空港がありますが、その多くはトルコ空軍が利用しています。近年では、アタテュルク大学の存在が経済に大きな影響を与えており、観光業も成長しています。観光客はスキー、カヌー、登山などを楽しむことができます。

エルズルム県は、豊かな歴史と自然に恵まれた、魅力的な地域です。

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