イェスン・テムル

イェスン・テムル（泰定帝）

イェスン・テムル（1293年11月28日 - 1328年8月15日）は、モンゴル帝国の第10代カアン（元朝としては第6代皇帝）です。漢風の廟号はなく、即位時の元号である泰定を用いて泰定帝と呼ばれています。

生涯

即位まで

イェスン・テムルの父は、クビライの孫であるカマラです。カマラはカアン位をめぐる争いに敗れ、帝位には就けませんでした。カマラの死後、イェスン・テムルは晋王の爵位を継ぎ、北方の防備を担当します。モンゴル高原に広大な領土と兵力を有し、遊牧民諸部族を代表する立場となりました。

至治3年（1323年）に発生した南坡の変で、英宗シデバラが暗殺されます。この事件を機に、イェスン・テムルはカアン位に擁立されます。当初、彼は事件に関与したテクシ一派を処刑しますが、同年9月にケルレン川で即位を宣言し、大赦を発しました。

12月には大都に入城し、翌年初頭に息子のアリギバを皇太子に指名しました。

即位後

泰定元年（1324年）には、中国各地で地震、豪雨、旱魃、蝗害が発生し、皆既日食や彗星の観測も重なり、社会不安を引き起こしました。イェスン・テムルは廷臣に原因を問い、対策を講じようとしましたが、状況は改善しませんでした。

比較的安定した5年間を過ごしましたが、致和元年（1328年）に上都で崩御しました。彼の死後、皇太子アリギバが即位しますが、カイシャンの遺児を支持する勢力が反発し、「天暦の内乱」が勃発、晋王系の政権は崩壊しました。この内乱の手際の良さから、イェスン・テムルの死は謀殺ではないかという疑いも生じました。

政権崩壊後、イェスン・テムルは傍流の皇帝と見なされ、廟号は贈られませんでした。

政策

イェスン・テムルは、支持基盤を固めるために様々な政策を行いました。華南の民衆の支持を得るため、儒教に理解を示しましたが、側近にはイスラム教徒やモンゴル人貴族を重用しました。特に、ダウラト・シャーをはじめとするイスラム教徒が国政の中枢を担い、貿易を奨励しました。

家族

父：晋王カマラ
母：ブヤンケルミシュ
后妃：バブカン（アリギバの母）、ピカン、スガダリ
子：アリギバ、パドマギャルポ、ヨンダン・ジャンボ、ソセ

元号

泰定（1324年 - 1328年）
致和（1328年）

イェスン・テムルの治世は短く、その評価は分かれていますが、激動の時代を生きた皇帝の一人として、歴史に名を残しています。

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