エレバス山

エレバス山

エレバス山は、南極ロス島に位置する活[[火山]]であり、地球上で最も南にある活[[火山]]として知られています。標高は3,794mで、ロス島の西部にそびえ立っています。

歴史

1841年、イギリスの探検家ジェームズ・クラーク・ロスによって発見されました。ロスは、自身の乗艦「HMSエレバス」にちなんでこの火山をエレバス山と名付け、同じく探検隊の別の艦船「HMSテラー」の名を、同じロス島にあるテラー山に付けました。エレバスという名前は、ギリシャ神話の原初神カオスの息子であるエレボスに由来しています。

1908年には、アーネスト・シャクルトンの探検隊の一員であるT.W.E.デイヴィッド率いる登山隊が初登頂に成功しました。山頂までの道のりは5日半にも及び、途中では暴風雪に見舞われて24時間以上も身動きが取れない状況や、外気が-34度まで低下する過酷な状況下での登山となりました。隊員の中には凍傷で指を失う者もいました。

1972年以降、エレバス山は南極で最も活動的な火山として観測されており、アメリカのニューメキシコ鉱山技術研究所のフィリップ・カイル教授が中心となり、継続的な調査が行われています。2005年には小規模な火山灰噴出や溶岩流出が観測されています。

地質学的特徴

エレバス山は、約130万年前に誕生したと考えられています。山頂の火口には、世界的に珍しい恒常的な溶岩湖が形成されており、その活動は常に注目されています。この火山は多重式成層[[火山]]に分類され、下部は楯状、その上に成層状の山体が乗っているという特徴的な構造をしています。これはイタリアのエトナ[[火山]]と同様の構造です。

エレバス山の噴火活動は、アノーソクレース斑岩質テフライト質フォノライトとフォノライトで構成されており、山頂の溶岩湖も主にこれらの物質で構成されています。山を構成する最も古い噴出物は、玄武岩質ベイサナイト溶岩であり、基部の楯状構造を形成しています。また、ファング尾根には初期のエレバス山の侵食された残存物である、ベイサナイトとフォノテフライトから成る溶岩が分布しています。より新しい溶岩は、粘性の高いフォノテフライトやテフリフォノライト、粗面岩で構成されています。山の上部では、テフライト質フォノライト溶岩流が急峻な斜面や自然堤防を形成しており、標高3,200m付近には過去10万年以内に形成されたカルデラがあります。山頂カルデラは、少量のテフライト質フォノライトとフォノライト溶岩で埋められており、その中央には崩壊した火山弾とアノーソクレース結晶からなる円錐丘があります。この円錐丘の内部に溶岩湖が存在し、複数の火道からストロンボリ式噴火を引き起こしています。

極寒の地における火山としての特徴

エレバス山には、火山の地熱によって氷が溶けてできた氷洞が存在します。有名なものとしては、ウォーレン氷洞やハット氷洞などがあり、観測の対象となっています。また、地表の噴気孔の上に形成される氷塔も特徴的です。噴出する水蒸気を含んだ噴気が外気に触れて凝結・凝固を繰り返すことで形成され、大きなものは10mを超える高さになります。山頂付近では、夏でも気温が-40℃を下回るなど、非常に過酷な環境です。

特記事項

1979年11月28日には、ニュージーランド航空のマクドネル・ダグラス DC-10型機がエレバス山腹に衝突し、乗員乗客257名全員が死亡するという痛ましい事故が発生しました。事故現場には、この事故を追悼するステンレス製の十字架が設置されており、南極史跡記念物に指定されています。

ロス島には、エレバス山の他にも3つの休止火山があります。

エレバス火山の麓には、ローワー・エレベス基地とアッパー・エレベス基地が設置されており、山腹にはニューメキシコ工科大学が運営するエレバス火山観測所があります。

関連項目

火山
火山の一覧

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