エンケ彗星

エンケ彗星 (Comet Encke)

概要

エンケ彗星（2P/Encke）は、公転周期が約3.3年という短い周期で太陽の周囲を回る周期彗星です。エンケ彗星の名前は、その軌道計算に成功した天文学者ヨハン・フランツ・エンケにちなむもので、1786年にピエール・メシャンとシャルル・メシエによって初めて発見されました。エンケ彗星は、知られている周期彗星の中では、パンスターズ彗星に次いで2番目に短い周期を持っています。

発見の歴史

エンケ彗星は、複数の天文学者によって独立して発見されました。1795年にはカロライン・ハーシェル、1818年にはジャン＝ルイ・ポンの観測もあり、最終的にヨハン・フランツ・エンケが彗星の回帰に関する詳細な計算を行いました。彼は1886年の彗星1786 B1から1818 W1までの4つの彗星の同定に成功し、その研究成果は1819年に発表されました。この発表によって、エンケ彗星は周期彗星として知られるようになり、1822年にはシドニー天文台での観測が行われています。

軌道の特性

エンケ彗星の軌道は、他の天体からの万有引力の影響を受けており、一般的にこのような天体は影響を受けやすい特性があります。地球型惑星からの干渉もあり、木星との7:2の軌道共鳴が特に注目されています。この共鳴により、エンケ彗星から放出された破片は、同様の軌道を持つと考えられています。なお、エンケ彗星は地球に最接近することがあり、1997年には0.19天文単位（au）、予測では2172年にはさらに近接することが期待されています。

観測の記録

エンケ彗星は、1818年以降、1944年を除いて継続的に観測されてきました。1913年にはウィルソン山天文台での観測が計画されましたが、写真乾板の紛失により実現しませんでした。その後、1918年や1972年など、いくつかの観測が成功し、1980年にはレーダー観測も行われています。1984年にはパイオニア・ヴィーナス・オービターを利用して紫外線観測が行い、様々なデータが収集されています。

流星群との関係

エンケ彗星は、おうし座流星群やおうし座ベータ流星群の母天体であり、これらの流星群は年に数回見られます。さらに、地球近傍小惑星2004 TG10は、エンケ彗星からの破片であると考えられています。このように、エンケ彗星は流星群にも影響を与えています。

水星における影響

NASAの探査機メッセンジャーによる観測によれば、エンケ彗星が水星にも流星群を引き起こす可能性があるとされています。2011年の観測では、カルシウム濃度が周期的に急増する現象が発見され、これはエンケ彗星由来の微細な粒子によるものと考えられています。

地球への影響

1908年に発生したツングースカ大爆発には、エンケ彗星からの破片が関与しているという説があります。スロバキアの天文学者Ľubor Kresákは、この影響を示唆する研究を行いました。

結論

エンケ彗星は、その特異な軌道と流星群への影響から、多くの関心を集めています。今後の観測や研究において、さらに多くの事実が明らかになることが期待されます。

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