エンデバー (帆船)

エンデバー号：クック船長の偉業を支えた船

エンデバー号は、18世紀イギリスを代表する小型帆船であり、ジェームズ・クック船長による歴史的な南太平洋探検航海の舞台としてその名を馳せています。単なる船舶以上の存在感を持ち、地理学上の発見だけでなく、航海術の発展にも大きく貢献しました。本稿では、エンデバー号の建造から探検航海、そしてその後の消息まで、詳細な情報を紹介します。

石炭船からの変貌

エンデバー号は当初、商業用の石炭運搬船として、1768年初頭にノースヨークシャー州ウィットビーで建造されました。その名は当初「アール・オブ・ペンブローク号」でしたが、王立協会による南太平洋探検計画に採用され、「エンデバー号」と改名されました。三檣帆船で、積載量が多く頑丈な造りだった一方、速度は速くなかったものの、平らな船底は浅い海域の航行に適していました。全長約32.3m、幅約8.9m、重量397トンという規模でした。

王立協会と海軍省の協働

1768年2月、王立協会は国王ジョージ三世に南太平洋探検を願い出ました。公式には金星の太陽面通過観測が目的でしたが、真の目的は「南方大陸」の探査でした。この探検計画にエンデバー号が採用され、海軍省によって約2,307ポンドで購入、大規模な改造が施されました。船体の防水処理や第三甲板の増築などが行われ、探検航海に耐えうる船へと生まれ変わりました。

艦長選任には紆余曲折がありました。当初、アレクサンダー・ダリンプルが推薦されましたが、海軍大臣エドワード・ホークは、海軍の船を民間人に委ねることに反対し、ジェームズ・クックが代わりに任命されました。クックは測量で実績があり、ホークの信頼を得ていました。クックは海尉の階級でしたが、乗組員からは「キャプテン」と呼ばれていました。

乗組員と探検航海

エンデバー号には、クック船長に加え、イギリスの博物学者ジョゼフ・バンクス、フィンランドのヘルマン・スペーリング、スウェーデンのダニエル・ソランダー、そして天文学者チャールズ・グリーンなど、多様な専門家が乗船しました。

1768年8月8日、プリマスを出港したエンデバー号は、マデイラ諸島、リオデジャネイロなどを経て、タヒチ島に到着。金星の太陽面通過観測を行い、その後、ニュージーランド、オーストラリアへと航海を続けました。

オーストラリア大陸では、1770年4月29日に、ボタニー湾に上陸。その後4ヶ月間、オーストラリア沿岸の測量を行いました。この航海で、クックはオーストラリア大陸東海岸の多くの部分を初めて詳細に地図に描き、世界地図を塗り替えました。

グレートバリアリーフでの座礁

1770年6月10日、エンデバー号はグレートバリアリーフ内のサンゴ礁（エンデバー礁）に衝突、座礁しました。船体に大きな損傷を受け、浸水も発生。乗組員はバラストや砲などを投棄して船を軽くし、満潮時に脱出を試みました。危険な状況でしたが、乗組員の冷静な対応と船長の決断により、脱出に成功。その後、エンデバー川で船体を修理し、航海を続けました。

壊血病対策

エンデバー号の航海は、壊血病対策においても大きな功績を残しました。クック船長は、様々な食品を船に備蓄し、上陸時には新鮮な野菜を採集するなど工夫を凝らしました。その結果、壊血病による死者は出ませんでした。

帰還とその後

エンデバー号は、1771年7月11日にイギリスに帰還しました。この航海で、クックは航海中の経度を正確に計算した最初の船長となりました。エンデバー号はその後、商船として売却されましたが、その後の消息は不明瞭です。ロードアイランド沖に沈没したという説もありますが、確証はありません。しかし、エンデバー号の座礁地点で発見された遺物は、オーストラリア国立海洋博物館などに保存・展示されています。

エンデバー号の復元

1988年には、オーストラリア入植200年記念事業として、エンデバー号の復元が開始され、1994年に完成。現在、シドニーのオーストラリア国立海洋博物館に係留されています。

エンデバー号は、単なる船舶としてだけでなく、歴史的意義深い探検航海の舞台、そして航海術、医学の発展に貢献した船として、今日にまで語り継がれる存在となっています。

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