エンニオ・デ・コンチーニ

イタリア映画界で多大な功績を残した脚本家、そして映画監督として知られるエンニオ・デ・コンチーニは、1923年 12月9日にイタリア王国（現在のイタリア共和国）の首都ローマに生を受けました。時にヴァシリー・ペトロフという別名義でも活動しています。彼は長いキャリアの中で、数多くの多様なジャンルの作品の脚本を執筆し、イタリア国内外で高く評価されました。

彼の脚本家としての最初の記録は、第二次世界大戦終結後の1949年に公開されたゴッフレード・アレッサンドリーニ監督作『さまよえるユダヤ人』に遡ります。この作品への参加を皮切りに、コンチーニはその才能を開花させていきます。特に、ピエトロ・ジェルミ監督との協業は、彼のキャリアにおいて重要な位置を占めています。1959年のジェルミ監督作『刑事』では、共同で脚本を執筆したジェルミ監督やアルフレード・ジャンネッティと共に、1960年にイタリア国内の権威ある映画賞であるナストロ・ダルジェント最優秀脚本賞を受賞しました。

その2年後、再びピエトロ・ジェルミ監督と組んだ『イタリア式離婚狂想曲』が彼の代表作の一つとなります。この作品の脚本で、彼はジェルミ監督、アルフレード・ジャンネッティとともに1962年のナストロ・ダルジェント最優秀脚本賞を再度獲得。さらに、国際的な栄誉として、同年に発表された第35回アカデミー賞において、見事に脚本賞を受賞しました。この受賞は、彼の脚本家としての手腕が世界的に認められたことを意味し、その名を不動のものとしました。

コンチーニの脚本作品は、そのジャンルの幅広さが特徴です。社会派ドラマから、歴史劇、神話・史劇スペクタクル、コメディ、ホラー、冒険活劇まで、多岐にわたる作品を手掛けました。ピエトロ・ジェルミ監督のネオレアリズモ色の濃い『鉄道員』、ディーノ・リージ監督のコメディ『ギャングと過ごすヴァカンス』や『ナポリと女と泥棒たち』、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の『さすらい』といった巨匠たちの作品に参加する一方で、ドゥイリオ・コレッティ監督の戦争映画や、ピエトロ・フランチーシ監督による『ヘラクレス』といった人気シリーズの脚本も担当しています。

また、セルジオ・レオーネ監督の初期の史劇『ロード島の要塞』、マリオ・バーヴァ監督のカルト的なホラー『血ぬられた墓標』やジャッロ映画の先駆けとされる『知りすぎた少女』、ルチオ・フルチ監督のコメディやマカロニ・ウェスタンなど、イタリア映画の様々な潮流における主要な作品にその名を連ねています。国際的な共同製作にも数多く関与し、『戦争と平和』（キング・ヴィダー監督）、『サン・セバスチャンの攻防』（アンリ・ヴェルヌイユ監督）、『SOS北極.../赤いテント』（ミハイル・カラトーゾフ監督）、『青ひげ』（エドワード・ドミトリク監督）、『ブルース・ダーンのザ・ツイスト』（クロード・シャブロル監督）、『サロン・キティ』（ティント・ブラス監督）、『トスカニーニ』（フランコ・ゼフィレッリ監督）など、名だたる監督たちと共に仕事をしました。

キャリア全体で169本にも及ぶ膨大な数の脚本を執筆したコンチーニですが、脚本家としてだけでなく、映画監督としても活動しています。1973年には『ダニエルとマリア』、同じく1973年には『アドルフ・ヒトラー最後の10日間』といった監督作品を発表し、自身の手で物語を映像化する試みも行いました。

彼の最後の脚本参加作品は、2003年に公開されたカルロ・リッツアーニ監督の『古代アッピア作戦』となりました。これが実質的な遺作となります。エンニオ・デ・コンチーニは、長い闘病生活の末、2008年 11月17日にローマでその生涯を終えました。享年84歳でした。彼の遺体は、生前を過ごしたローマ市内にあるヴェラーノ墓地に静かに眠っています。

エンニオ・デ・コンチーニは、その多才さと prolific （多作）さをもって、イタリア映画の黄金期からその後の時代にかけて、数多くの傑作、話題作の誕生に不可欠な役割を果たしました。彼の脚本は、時に社会の風刺、時に壮大な歴史絵巻、時に緊迫したサスペンス、時に人間ドラマと、多様な物語世界を観客に提供し続け、イタリア映画史に確固たる足跡を残しています。

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