エンリケ2世 (カスティーリャ王)

エンリケ2世：簒奪の王とスペインの礎

エンリケ2世（1334年 - 1379年）は、カスティーリャ王国トラスタマラ朝の初代国王です。彼は、アルフォンソ11世と愛妾レオノール・デ・グスマンの庶子として生まれました。正当な王位継承者ではありませんでしたが、波乱に満ちた生涯の末に王位を簒奪し、その治世は後のスペインの歴史に大きな影響を与えました。

生涯：王位簒奪への道

エンリケは庶子であったため、王位継承権を持たず、トラスタマラ伯の養子に出されました。1351年に異母弟のペドロ1世が即位すると、エンリケとその母はペドロ1世から命を狙われることになります。これは、ペドロ1世が自身の王位を脅かす存在を排除しようとしたためでした。身の危険を感じたエンリケは、フランスやアラゴン王国の支援を得て、1352年にペドロ1世に対して反旗を翻します。

カスティーリャの内乱は、ペドロ1世を支援するイングランド（エドワード黒太子）と、エンリケを支援するフランスとの代理戦争の様相を呈し、長期化しました。1366年、エンリケは大軍を率いてカラオラに到達し、国王となることを宣言します。彼は貴族や聖職者に対し、多額の金銭や領土を与え、着々と国内の支持勢力を拡大していきました。この政策は「エンリケの恩寵」と呼ばれています。ナヘラの戦いではペドロ1世とイングランド軍に敗北するなど苦戦を強いられる場面もありましたが、1369年のモンティエルの戦いでペドロ1世軍を破り、ついにペドロ1世を討ち果たしました（一説にはエンリケ自身が刺殺したとも）。こうしてエンリケは、カスティーリャ王として正式に即位しました。

治世と評価

内戦中にフランスの支援を受けたエンリケ2世は、百年戦争においてフランスを支援し、1372年にはラ・ロシェルの海戦でイングランド海軍に大勝しました。また、アラゴン王国との婚姻関係を深めるなど、後のスペイン王国誕生の基礎を築き上げました。セゴビアのアルカサル（王城）を改築したことでも知られています。このアルカサルは、現在では世界遺産に登録されています。

しかし、エンリケ2世の治世は、国内の貴族勢力の増大という負の側面も生み出しました。彼が王位簒奪者であったため、自らの正当性を主張する必要があり、そのために貴族への恩賞を惜しまなかったことが、貴族勢力の拡大を招いたのです。また、ペドロ1世は記録を残す聖職者と不仲であったため、エンリケ2世に関する同時代の記録は、彼に有利なように書かれている可能性も指摘されています。

エンリケ2世は1379年5月29日にペドロ1世を慕う騎士に暗殺されました。

子女

フアン・マヌエルの娘フアナ・マヌエルとの間に、以下の子供をもうけました。

フアン1世：カスティーリャ王
レオノール：ナバラ王カルロス3世と結婚

この他に多くの庶子ももうけています。

エンリケ2世が登場する作品

漫画：青池保子作『アルカサル-王城-』

関連項目

第一次カスティーリャ継承戦争

エンリケ2世は、その複雑な出自と激動の生涯を通して、カスティーリャ王国の歴史に大きな足跡を残しました。王位簒奪という側面を持ちながらも、後のスペイン王国の礎を築いた功績は、歴史の中で評価され続けています。

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