オイクレース

オイクレースは、古代ギリシアの神話世界に名を残す人物です。彼は、有名な予言者メラムプースの孫であるアンティパテースと、ヒッポコオーンの娘ゼウクシッペーの間に生まれました。伝承によっては、アンティパテースの兄弟にあたるマンティオスが彼の父であるとも語られています。オイクレースにはアムパルケースという兄弟がいました。

オイクレースはテスティオス王の娘ヒュペルムネーストラーを妻とし、未来を予見する能力を持つ英雄アムピアラーオスを息子としてもうけました。しかし、彼の家族構成についても異説が存在します。ある伝承では、妻はテスピオスの娘ヒュペルムネーストラーとされ、アムピアラーオスの他にイーピアネイラ、ポリュボイアという娘たちもいたとされています。さらに、息子アムピアラーオスの真の父は、神々の中でも特に予言と音楽を司るアポローンであったとする異説も伝えられています。

彼の生涯で特に語られる出来事の一つに、英雄ヘーラクレースによるトロイアへの遠征への参加があります。この遠征において、ヘーラクレースが都市を攻撃するために上陸している間、オイクレースは船団を守る役割を担っていました。しかし、トロイア王ラーオメドーン率いる軍勢による攻撃を受け、彼はこの戦いの最中に命を落としました。ヘーラクレースの部隊が戻りトロイア軍を撃退した時には、すでにオイクレースは戦死していたのです。

しかし、すべての伝承がオイクレースのトロイア遠征での死を語るわけではありません。特にアルカディア地方に伝わる話では、彼はこの遠征に参加しなかったとされています。アルカディアのメガロポリスからマイナロスに向かう街道沿いには、オイクレースの墓とされる場所があったと伝えられています。紀行家パウサニアスは、オイクレースがトロイア遠征に参加しなかったという話に対して懐疑的な見方を示していますが、一方で、彼の孫にあたるアルクマイオーンが母エリピューレー殺害の罪により放浪していた際に、一時的にアルカディアのオイクレースのもとに身を寄せたという話も存在します。これは、オイクレースがトロイアで戦死しなかった可能性を示唆する伝承と言えるでしょう。

さらに、シケリア出身の歴史家ディオドーロスは、ヘーラクレースのトロイア遠征に参加したオイクレースは、このアムピアラーオスの父であるオイクレースではなく、その息子であるアムピアラーオスの子、すなわち孫にあたるオイクレースであったと述べています。このように、オイクレースという人物、特にその最期については、古代の様々な記録や伝承によって異なる物語が語り継がれているのです。

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