オオカバマダラ

オオカバマダラ



オオカバマダラ(学名: Danaus plexippus)は、タテハ[[チョウ科]]マダラチョウ亜科に分類される大型のチョウです。鮮やかなオレンジ色の翅と、黒い縁取り、白い斑点が特徴で、北アメリカでは渡りをするチョウとして広く知られています。

特徴



成虫の前翅長は約5センチメートルです。翅は鮮やかなオレンジ色で、翅脈と縁が黒く、黒い縁取りには小さな白い斑点があります。オスとメスを比較すると、オスは後翅の腹部に近い部分に黒い斑点がありますが、メスにはこの斑点がなく、黒い翅脈がオスよりも太いです。ゆっくりと飛ぶように見えますが、飛行能力は高く、あまり羽ばたかずに気流に乗って長距離を移動することができます。

分布は主に北アメリカカナダ南部から南アメリカ北部にかけてですが、西インド諸島、太平洋諸島(オーストラリアニュージーランドなど)、カナリア諸島マデイラ諸島にも生息しています。日本では、小笠原諸島南西諸島で発見された記録がありますが、これらは定着しておらず、季節風や台風に乗って日本にやってきた迷蝶と考えられています。

生態



オスはメスを見つけると、尾部から毛の束を出し、そこからフェロモンを放出してメスの周囲を飛び回ります。交尾を終えたメスは、幼虫食草であるトウワタなどのキョウチクトウ科(旧分類ではガガイモ科)の植物に産卵します。幼虫は白黒の横縞模様で、頭部と尾部に黒い突起があります。は青緑色で、羽化が近づくと金属光沢のある灰黒色になります。

幼虫はトウワタの葉を食べることで、トウワタに含まれるアルカロイドを体内に蓄積し、化します。このや成虫も持ち続けているため、鳥などがオオカバマダラを捕食すると苦しみ出し、吐き出してしまいます。鮮やかな体色は、捕食者に対してを持つことを知らせる警戒色です。また、カバイロイチモンジのように、オオカバマダラの翅色に似せた擬態ベイツ型[[擬態]])を行うことで身を守るチョウもいます。分布域の南部では、同属の他のチョウと分布が重なるため、ミューラー型[[擬態]]も見られます。

大移動



北アメリカに分布する基亜種D. p. plexippusは、南北3500キロメートルにも及ぶ広範囲で、1年の間に北上と南下を繰り返します。南下は1世代で行われますが、北上は3~4世代かけて行われるため、同じ個体が移動する渡り鳥とは異なります。

春にはカリフォルニア州からメキシコにかけて見られ、世代交代を繰り返しながら徐々に北上し、夏には北アメリカ中部にまで達します。8月頃、北アメリカ中部で羽化した個体が南下を開始します。この世代は、多くの花から蜜を吸い、体内に脂肪を大量に蓄積します。この脂肪をエネルギーにして、春に移動を開始したカリフォルニアからメキシコにかけての地域を目指します。ロッキー山脈から東ではメキシコミチョアカン州で越冬し、西ではカリフォルニア州の中部から南部で越冬します。10月頃には、これらの地域の森林地帯で、木の枝に鈴なりになったオオカバマダラが見られます。このような木では、チョウの重みで枝が折れることもあります。

南下する世代は、北上する世代よりも寿命が長く、この大移動に関する多くの報告や研究があります。大移動の理由の一つとして、「幼虫食草を枯渇させないため」という説があります。

アメリカフロリダ州からカリブ海、アマゾン川流域に分布するD. p. megalippe亜種渡りをしません。

保護の現状



オオカバマダラは、越冬地となる森林の伐採により、近年個体数を大幅に減らしています。そのため、北米諸国では越冬地を保護区とするなどの保護活動が行われています。カナダ政府は、本種を「特別懸念(Special Concern)」に指定しています。

人間との関係



その美しい姿と興味深い生態から、アングロアメリカでは広く愛されています。アメリカの複数の州で州の昆虫や州のチョウに指定されています。また、カナダの国虫でもあり、アメリカ合衆国の国虫にもノミネートされました。

ペットや教材として飼育されることもあり、結婚式で大量の成虫を放つことも人気があります。昆虫学者は、愛蝶家の協力により、北米各地で秋に捕獲した成虫の翅に標識シールを貼って放ち、渡りの生態を調査しています。カリフォルニア州メキシコでは、越冬地をエコツーリズムに活用する例もあります。

メキシコでは、オオカバマダラが越冬のために飛来する時期が死者の日と重なるため、親族の霊が蝶の姿で戻ってくると信じられてきました。

テレビ放映



大移動とメキシコでの保護活動を紹介する仏加共同制作のテレビ番組が2007年にNHKで放映され、その後2013年に再放送されました。また、NHK BSプレミアムでも再々放送されました。

NHKの教育番組「むしまるQ」では、本種の生態を題材とした楽曲「チョウの来た道」が制作されました。

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