オオミズナギドリ

オオミズナギドリ (大水薙鳥)

オオミズナギドリ（学名: Calonectris leucomelas）は、ミズナギドリ目ミズナギドリ科に属する海鳥です。日本のミズナギドリ科の中では最大種であり、春から秋にかけて日本近海でよく見られます。陸地からも観察できる身近な存在です。

分布

西太平洋北部の温帯域に分布し、ミズナギドリ科の中では唯一この地域で繁殖します。夏鳥として、日本近海、黄海、台湾周辺の島嶼に生息しています。

日本では、夏季に北海道（渡島大島）から八重山諸島（仲御神島）にかけての離島で繁殖します。韓国では済州道の管轄となる泗水島に大規模な繁殖地があり、他の島々でも少数が繁殖しています。冬季になると、フィリピンやオーストラリア北部周辺へ南下して越冬しますが、一部は日本近海に残る個体もいます。

南下する一部の個体は、マレーシアを経由してマラッカ海峡を通り、スリランカ周辺の海域にまで渡ることがあります。オーストラリア北部沿岸沖には11月から3月にかけて多く分布し、東海岸ではウロンゴン沿岸付近まで1月から3月頃に見られます。同様に西海岸ではジェラルトン辺りまで夏鳥として渡来します。繁殖地の北限は、ピョートル大帝湾のカラムジン島です。

形態

全長は48cm（46-51cm）、翼開長は120cm（110-122cm）です。体長や翼開長はウミネコと同程度ですが、飛翔時には翼がカモメ類よりも細長く見えます。体重は440-545gです。ミズナギドリ科の中では大型種であることが、和名の由来となっています。

雌雄同色で、体の上面は暗褐色の羽毛で覆われています。羽毛の外縁が淡色のため、白い波状の斑紋が入っているように見えます。大雨覆や次列風切は淡褐色で、飛翔時には不明瞭なアルファベットの「M」字状に見えます。頭部は白い羽毛に不明瞭な褐色の斑紋や斑点が点在します。尾羽は黒または黒褐色です。体の下面は白い羽毛で覆われています。翼の下面は白いですが、初列下雨覆の外側や風切羽下面は黒または黒褐色です。

嘴の色はピンク色がかった淡青色で、先端に黒みがあります。足はピンク色です。

生態

通常、地表から直接飛び立つことは苦手で、斜面を使って助走したり、断崖や樹上から飛び降りたりする必要があります。しかし、岩手県の三貫島や伊豆諸島の御蔵島の繁殖地では、地面から羽ばたいて飛び立つ様子も観察されています。飛び立てない理由として、体重の重さや翼の長さと足の短さなどが挙げられることがありますが、他のミズナギドリ目の鳥類と比べて特に体形が大きく異なるわけではありません。

繁殖期以外は海上での生活が中心です。滑空を主体とし、ゆっくりとした羽ばたきを交えながら、海面近くを左右に翼を傾けて飛び回り、餌となる魚群などを探し、見つけると遠方からも集まってきます。

食性は動物食で、魚類や軟体動物などを捕食します。水面を泳ぎながら水面近くにいる獲物を捕らえたり、浅く潜水して捕獲します。特にカタクチイワシを多く利用することが報告されています。海面からは、翼を広げて羽ばたきながら風上に向かって助走し、飛び立ちます。

海上ではほとんど鳴きませんが、夜間の営巣地では鳴き声や翼の音が非常に騒がしくなります。鳴き声は、オスが「ピーウィーピーウィー」、メスが「グワーェグワーェ」などと聞こえます。

繁殖

2月から3月頃に集団繁殖地に飛来します。平地や斜面を問わず森林に90-100cmほどの横穴を掘り、奥を20-30cm × 10-20cmに広げ、枯葉などを敷いた巣を作ります。6月から7月にかけて、1回に1個の卵を産みます。巣穴の形状は「棒状型」「くの字型」「迷路型」など様々です。卵の大きさは6.25-7.22cm × 4.2-4.7cmで、白色無斑です。雌雄が昼夜交代で抱卵し、抱卵期間は52-54日です。雛は孵化してから70-90日で巣立ちます。

抱卵や抱雛をしない親鳥は、未明から海上に出て餌を探し、日没後に巣穴に戻って雛に給餌します。時速約35kmで飛び、巣に戻るまでにかかる時間を考慮して餌場から帰巣し、門限を守る習性があります。

10月（孵化後2ヶ月）には、雛は親鳥よりも体重が重くなり、1.5倍にもなります。やがて親鳥が雛を残して島を離れた後も、雛は約3週間にわたって蓄えた脂肪で成長し、11月下旬から12月上旬に島から飛び立ちます。

人間との関係

太平洋戦争の戦前、戦中、戦後の期間には、日本各地の繁殖地で羽毛が利用されたり、食用とされることがありました。沖縄県仲の神島では組織的な捕獲事業が行われ、生息数は大きく減少しました。一方、御蔵島では住民らが厳しい自主規制のもと保護を行い、捕獲を行いました。池田真次郎の『森林と野鳥の生態』によると、御蔵島では年に一度巣立ち前の雛を捕獲し、皮から油を搾り、肉は塩漬け、骨と内臓は挽いて塩辛にしたとされています。また、糞が堆積し化石化してできたグアノは肥料として利用されました。御蔵島では本種を「カツオドリ」と呼んでいますが、「カツオドリ」の標準和名を持つ鳥は別に存在し、オオミズナギドリとは全くの別種です。

日本では、以下の繁殖地が国の天然記念物に指定されています。

1924年: 京都府舞鶴市 冠島「オオミズナギドリ繁殖地」
1928年: 北海道松前町 渡島大島「オオミズナギドリ繁殖地」
1935年: 岩手県釜石市 三貫島「三貫島オオミズナギドリおよびヒメクロウミツバメ繁殖地」
1938年: 島根県西ノ島町 星神島「星神島オオミズナギドリ繁殖地」
1940年: 島根県隠岐の島町 沖ノ島「沖島オオミズナギドリ繁殖地」
1972年: 新潟県粟島浦村 粟島「粟島のオオミズナギドリおよびウミウ繁殖地」

京都府の府鳥に指定されています。

関連項目

ミズナギドリ科
オオミズナギドリ属

参考文献

* オオミズナギドリ 日本野鳥の会

もう一度検索