オクタヴァリウム

ドリーム・シアター 『オクタヴァリウム』(Octavarium) 解説

『オクタヴァリウム』は、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド、ドリーム・シアターが2005年に発表した8枚目のスタジオ・アルバムです。ニューヨークのザ・ヒット・ファクトリーで録音された最後のアルバムであり、ギタリストのジョン・ペトルーシは、本作をバンド最高の作品の一つと評しています。

楽曲構成の妙

このアルバムは、前作『トレイン・オブ・ソート』、前々作『シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス』から続く、楽曲数とタイトルに数字を意識した構成が特徴的です。8枚目のアルバムである本作は、8曲を収録し、タイトルに「8」を連想させる「オクタヴァリウム」と名付けられています。次作『システマティック・ケイオス』では、8曲収録ながら1曲目が9分という形で、その流れを汲んでいます。

また、1曲目の「ザ・ルート・オブ・オール・イーヴル」は、前作のラストを飾る「イン・ザ・ネイム・オブ・ゴッド」の終わりに挿入されたピアノの音から始まります。これは、『メトロポリス・パート2: シーンズ・フロム・ア・メモリー』以降のアルバムで試みられていた、前作の終わりが次作の始まりに繋がるという仕掛けを継承したものです。ただし、この手法は本作で完結しています。

アルバム全体は、F（ヘ短調）から始まり、G（ト短調）、A（イ短調）、B（ロ短調）、C（ハ短調）、D（ニ短調）、E（ホ短調）と続き、再びF（ヘ短調）に戻るという、短音階のサイクルで構成されています。これは、ライナーノーツの調号からも読み取ることができます。各楽曲間の境界線は、それぞれの楽曲と関連付けられた臨時記号の一致によって表現されています。例えば、「パニック・アタック」に続くシンセサイザーソロ（ハ短調）は、次の曲「ネヴァー・イナフ」（ニ短調）へと繋がっています。

黄金比との関連性

多くのファンは、アルバム全体に散りばめられた黄金比への言及、特にアルバムのアートワークに描かれた「5」と「8」の数字に注目しています。「オクタヴァリウム」という言葉自体が5つの音節で構成され、「octa」という接頭辞が「8」を意味しています。ピアノの1オクターブにおける白鍵の数 (8) と黒鍵の数 (5) も、これらの数字の使用と関連付けられます。さらに、バンド結成年の1985年からアルバム発表年の2005年までの年数、バンドメンバー数、8枚目のスタジオ・アルバムである本作、5作目のライブ・アルバムである『スコア』など、様々な要素が「5」と「8」に関連付けられています。

アルバムのアートワークには、8個の振り子からなるニュートンのゆりかごが描かれ、ピアノの黒鍵と同じ配置で5羽の鳥が配置されています。アルバムの裏ジャケットには、1オクターブ分のピアノの鍵盤が描かれています。ブックレットには、合計が5と8になるドミノ、8本の足を持つクモが囚われた八角形の迷路、タコと魚、五芒星と八角形が描かれた設計図など、様々な形で「5」と「8」が登場します。

タイトルトラックである「オクタヴァリウム」は、5つのパートで構成されています。CD盤面には、八角形の中に星が描かれており、これは五度圏の進行に沿った音楽的なキー（調）を表しています。5曲目の「パニック・アタック」は8分13秒で終わり、5、8、13は黄金比に現れるフィボナッチ数列の連続した数です。

これらの要素から、アルバム全体が連続性を表現するコンセプト・アルバムとして意図されたという説が有力です。

タイトル名の由来

当初、バンドはアルバムタイトルを『オクターヴ』にする予定でしたが、プログレッシブ・ロックバンドのSpock's Beardが『Octane』というアルバムを発表したため、変更を余儀なくされました。その後、カトリック教会の典礼書『Octavarium Romanum』を参考に、現在のタイトルが考案されました。

このタイトルは、音楽用語のオクターヴにも関連しています。アルバムの1曲目のタイトルが「The Root of All Evil」であることからも、音楽的な意味合いが込められていることが伺えます。また、「オクタヴァリウム」はラテン語で「様々な8つ」を意味するとも解釈できますが、これは正確なラテン語ではありません。おそらく、バンドの8枚目のアルバムであることから派生した解釈と考えられます。別の解釈として、「-arium」という接尾辞が「何かを保持する場所」を意味することから、「オクターヴ」を保持する場所、つまり「オクタヴァリウム」と解釈することもできます。

『オクタヴァリウム』は、ドリーム・シアターの音楽性とコンセプトが融合した、奥深い作品と言えるでしょう。

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