フォリア

フォリア (Folia): 狂騒から優雅へ、時代を超える旋律

フォリアは、イベリア半島を起源とする舞曲です。15世紀末にポルトガルまたはスペインで生まれたとされていますが、正確な起源は特定されていません。サラバンドと同様に3拍子で緩やかな音楽であり、「狂気」や「常軌を逸した」という意味合いを持ちます。元々は騒がしい踊りのための音楽でしたが、時を経て優雅で憂いを帯びた曲調へと変化しました。

定型化された旋律と変奏曲の流行

フォリアは、低音部と和声進行が定型化されるにつれて、変奏曲形式で演奏されることが一般的になりました。17世紀にはイタリアで大流行し、多くの作曲家がフォリアを題材に作品を制作しました。この手法は、シャコンヌやパッサカリアなどの変奏曲、あるいはパッヘルベルのカノンとも共通するものです。

特に有名なのは、アルカンジェロ・コレッリの『ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ』作品5（1700年）の第12曲『ラ・フォリア』です。アントニオ・ヴィヴァルディも『トリオ・ソナタ集』作品1（1703年頃）の第12曲にコレッリ形式の『ラ・フォリア』を据えています。また、コレッリの弟子のフランチェスコ・ジェミニアーニは、この楽曲を作品5『アルカンジェロ・コレッリのヴァイオリン・ソナタOp.5による合奏協奏曲集』（1726/27年）の中で編曲しています。

フォリアはその後も様々な時代で扱われ、フォリアと明記されていなくても、フォリアの低音部進行を部分的に採用した楽曲も数多く存在します。

コレッリとの混同とラフマニノフの作品

コレッリの作品が非常に有名になったため、フォリアそのものがコレッリの作品と同一視されるという誤解も広まりました。20世紀になってセルゲイ・ラフマニノフがフォリアを題材にした変奏曲を作曲した際、『コレッリの主題による変奏曲』作品42という題名をつけたほどです。

フォリアの低音部進行

フォリアの低音部進行は、おおむね主音を中心とした短音階で構成されています。例えば、イ短調の場合、A-E-A-G-C-G-A-Eという進行になります。

フォリアに基づいた作品を作曲した作曲家たち

フォリアは、数多くの作曲家たちに影響を与え、様々な作品が生み出されました。

ディエゴ・オルティス
アントニオ・デ・カベソン
ガスパル・サンス
アルカンジェロ・コレッリ
ジャン＝バティスト・リュリ
マラン・マレー
アレッサンドロ・スカルラッティ
アントニオ・ヴィヴァルディ
フランチェスコ・ジェミニアーニ
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ
アントニオ・マルティン・イ・コル
アントニオ・サリエリ
フランツ・リスト
セルゲイ・ラフマニノフ
嶋津武仁
新実徳英

その他、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』では、第1幕の「シャンペンの歌」で「メヌエットだろうが、ラ・フォリアだろうが、アルマンドだろうが、踊らせろ」という歌詞が登場します。また、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第5番（運命）の第2楽章途中には、フォリアの和声進行が現れます。

フォリアは、時代を超えて愛され、様々な形で音楽史に影響を与え続けている魅力的な舞曲です。

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