オデッサ (組織)

オデッサ：ナチス関係者の逃亡支援ネットワークの実態

第二次世界大戦終結後、多くのナチス関係者が国外逃亡を試みました。その逃亡を支援した組織として、しばしば「オデッサ (ODESSA)」の名前が挙げられます。これは、Organisation der ehemaligen SS-Angehörigen（元SS隊員の組織）の略称とされています。しかし、その実態は、単一の組織というよりは、複数の組織や勢力が関与した複雑なネットワークであった可能性が高いことが、近年の研究で明らかになってきています。

サイモン・ヴィーゼンタールと「オデッサ」

ナチス戦犯追及に生涯を捧げた歴史家、サイモン・ヴィーゼンタールは、1946年に結成された世界的な組織として「オデッサ」の存在を主張しました。彼の著作では、元SS将校を中心とした組織が、逃亡資金の提供や偽造書類の作成、安全な隠れ家の提供などを行い、多くのナチス関係者の国外逃亡を支援したとされています。

複数の組織による連携：新たな視点

しかし、ヴィーゼンタールの主張は、他の歴史家や研究者から疑問視されています。ドイツの第2ドイツテレビ（ZDF）による元SS隊員へのインタビューなど、様々な資料からは、ヴィーゼンタールが主張するような「単一の世界的組織」としてのオデッサは存在せず、複数の組織がそれぞれ独自に、あるいは連携して、元ナチス関係者の逃亡を支援していた可能性が示唆されています。

これらの組織には、公的機関、非公的組織、そして宗教団体までもが関わっていたと指摘されています。具体的には、[バチカン]]を含むカトリック教会、アメリカ中央情報局]、[[南アメリカのチリやアルゼンチンなどの政府機関、そしてロッジP2のような極右秘密結社などが、元ナチス関係者の逃亡を支援したとの疑惑があります。さらに、元ドイツ国防軍関係者が中心となって設立された、SS同志会やルーデル・クラブといった組織も、戦犯者の逃亡に関与していたとされています。

逃亡先の地理的広がり

元ナチス関係者は、世界中に逃亡しました。特に南アメリカは、多くの元ナチス関係者が逃亡先としたことで知られています。アルゼンチン、チリ、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアなどが主要な逃亡先として挙げられます。ヨーロッパでは、スイス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどが、逃亡経路上の経由地として利用されたと考えられています。また、中東（シリア、エジプト）やアフリカ（アルジェリア、モロッコ）にも、元ナチス関係者が逃亡した記録が残っています。バチカンも、逃亡経路上の重要な経由地であったと指摘されています。

オデッサと関連する人物、出来事

オデッサの活動と関連する重要な人物として、アドルフ・アイヒマン、ヨーゼフ・メンゲレ、ヨーゼフ・ディートリヒ、アロイス・ブルンナー、クラウス・バルビー、ラインハルト・ゲーレン、オットー・スコルツェニー、ハンス＝ウルリッヒ・ルーデル、アルフレート・ナウヨックスなどが挙げられます。また、ペーパークリップ作戦、世界首都ゲルマニア、コロニア・ディグニダといった歴史的事象も、オデッサの活動と関連づけて議論されることがあります。

まとめ

「オデッサ」は、単一の組織というよりは、複数の組織や勢力が複雑に絡み合った、ナチス関係者の逃亡支援ネットワークであったと考えるのが妥当です。そのネットワークの規模や組織的な連携の程度は、現在もなお議論の対象となっていますが、元ナチス関係者の逃亡を支援した事実、そしてその支援に様々な組織や国家が関与した可能性は、歴史的事実として認識しておく必要があるでしょう。今後の研究によって、さらに詳細な事実が明らかになることが期待されます。

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