オマール・フィゲロア

オマール・フィゲロア Jr.

オマール・フィゲロア（Omar Figueroa Jr.）は、1989年12月13日にテキサス州ウェスラコで生まれた、アメリカ合衆国の元プロボクサーです。WBC世界ライト級王座を獲得した実績を持ち、彼の弟であるブランドン・フィゲロアもまた、元WBC世界フェザー級、元WBA・WBC世界スーパーバンタム級王者という兄弟での世界王者となりました。

アマチュアボクシングでは約40戦の経験がありましたが、特筆すべき大きなタイトルを獲得するには至りませんでした。しかし、プロのリングに上がるとその才能は開花します。2008年6月21日、プロデビュー戦を迎え、初回わずか25秒での鮮烈なノックアウト勝利を飾り、幸先の良いスタートを切りました。

キャリア初期は順調に白星を重ね、地域タイトルを獲得していきます。2012年1月6日には、カリフォルニア州インディオで行われたWBOインターコンチネンタルライト級ユース王座決定戦でマイケル・ペレスと対戦し、6回終了時の棄権によるTKO勝利でこのタイトルを獲得しました。さらに2013年4月20日、テキサス州サンアントニオのアラモドームで開催された一戦では、FECARBOXライト級王者アブネル・コットを相手に、初回2分57秒での一方的なKO勝利を収め、コットが保持していた王座に加え、WBC世界ライト級シルバー王座およびNABA北米ライト級王座も同時に獲得しました。

そして、世界王座への挑戦の機会が訪れます。2013年7月27日、サンアントニオのAT&Tセンターで、WBC世界ライト級1位にランクされていた日本の荒川仁人とWBC世界ライト級暫定王座決定戦で対戦しました。この激しい一戦で、フィゲロアは2回に先制のダウンを奪い試合の主導権を握ると、6回にも再びダウンを追加。荒川の粘り強い反撃を受けながらも、最終的に12回判定となり、3-0（119-107、118-108、118-108）のスコアで勝利。暫定ながらも、悲願だった主要世界タイトルを獲得しました。

暫定王者となったフィゲロアですが、正規王者であったエイドリアン・ブローナーが王座の防衛戦を行う意思を示さなかったため、WBCはブローナーから王座を剥奪しました。これに伴い、2014年1月27日付けでフィゲロアは空位となったWBC世界ライト級正規王座に認定され、正式な世界王者となりました。

正規王者としての初防衛戦は、負傷により一度延期された後、2014年4月26日にカリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センター・テニスコートで行われました。相手はWBC世界ライト級15位のジェリー・ベルモンテス。この試合は接戦となり、12回判定にもつれ込みましたが、2-1（116-112、118-110、113-115）の僅差で勝利し、初防衛に成功しました。続く2度目の防衛戦は2014年8月16日、同じくスタブハブ・センター・テニスコートで、WBC世界ライト級1位で指名挑戦者のダニエル・エストラーダを迎えて行われました。この試合ではフィゲロアの強打が再び火を吹き、9回1分にTKO勝利を収め、2度目の防衛に成功しました。

しかし、度重なる負傷の影響もあり、2014年11月10日、WBCはフィゲロアを休養王座に認定しました。また、2015年1月9日には、所属していたゴールデンボーイ・プロモーションズがプロモート権を放棄したことで、同プロモーションを離脱しています。

この頃から、キャリアは順風満帆とは言えなくなります。2015年3月26日には飲酒運転で逮捕されるなど、リング外でのトラブルも報じられました。復帰戦となった2015年5月9日のリッキー・バーンズ戦（スーパーライト級契約ノンタイトル）では、前日計量で体重超過してしまう失態を演じました。試合自体は12回判定で勝利しましたが、度重なるトラブルは影を落とします。その後も、予定されていたアントニオ・デマルコ戦が負傷により中止になったり、再びデマルコ戦が組まれた際には10ポンド（約4.5kg）もの大幅な体重超過を犯しながらも、試合は行われ判定勝利を収めたりと、コンディション調整に問題を抱えている様子がうかがえました。

しばらくリングから離れた後、2017年7月15日には約1年8カ月ぶりに復帰。元4階級制覇王者のロバート・ゲレーロとウェルター級10回戦で対戦し、3回にTKO勝利を収めました。この試合でのファイトマネーは、両選手ともに25万ドル（約2800万円）でした。しかし、翌2018年1月29日には再び飲酒運転で逮捕されるなど、私生活での問題も続きました。

2019年2月16日、約1年7カ月ぶりの試合でジョン・モリーナ・ジュニアに判定勝利を収め、再びキャリアを立て直そうとします。同年7月20日には、ヨルデニス・ウガスとWBC世界ウェルター級挑戦者決定戦で対戦。勝利すればエロール・スペンス・ジュニアへの挑戦権が得られる重要な一戦でしたが、12回判定で0-3の大差で敗れ、挑戦権獲得はなりませんでした。この試合のファイトマネーは、ウガスと共に30万ドル（約3200万円）でした。

新型コロナウイルス禍の影響もあり、再びリングから遠ざかったフィゲロアは、2021年5月1日に約1年9カ月ぶりに復帰。カリフォルニア州で開催されたアベル・ラモスとのWBA世界ウェルター級挑戦者決定戦に出場しました。この試合は、コロナ禍における同州初の観客を入れての開催となりましたが、フィゲロアは6回終了後に棄権しTKO負けを喫しました。この敗戦により、ジャーマル・ジェームスへの挑戦権を得ることはできませんでした。この試合でのファイトマネーは20万ドル（約2180万円）、ラモスは15万ドル（約1640万円）でした。

そして、キャリア最後の試合は2022年8月20日に行われました。約1年3カ月ぶりのリングで、セルゲイ・リピネッツとWBC世界スーパーライト級王座挑戦者決定戦及びWBC世界スーパーライト級シルバー王座決定戦で対戦しました。しかし、この試合でも2回にダウンを奪われるなど劣勢となり、8回終了後に棄権。TKO負けを喫し、シルバー王座獲得およびジョシュ・テイラーへの挑戦権は得られませんでした。試合後のインタビューで、フィゲロアは現役からの引退を表明しました。

オマール・フィゲロアは、そのキャリアにおいて、WBOインターコンチネンタルライト級ユース王座、FECARBOXライト級王座、WBC世界ライト級シルバー王座、NABA北米ライト級王座、WBC世界ライト級暫定王座、そしてWBC世界ライト級正規王座を獲得しました。強打で多くのKO勝利を収めた一方で、負傷やリング外のトラブル、体重管理の問題などにも苦しみ、波乱に満ちたキャリアを送りました。

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