オラシオ・グティエレス

オラシオ・グティエレス

キューバのハバナに1948年に生まれたオラシオ・グティエレスは、驚異的な技巧を誇るヴィルトゥオーゾ・ピアニストとして、国際的に高く評価されています。

音楽の道への第一歩は、わずか13歳で家族と共にアメリカ合衆国へ移住したことから始まります。ロサンゼルスに到着した彼は、まずセルゲイ・タルノフスキーに師事しました。タルノフスキーは、かのウラディミール・ホロヴィッツの若き日の師としても知られる存在です。その後、音楽教育の中心地ニューヨークへ移り、名門ジュリアード音楽学校でアデール・マーカスの指導を受けました。マーカス自身も、伝説的なピアニスト、ヨゼフ・レヴィーンの薫陶を受けた人物です。さらに研鑽を積むため、グティエレスはウィリアム・マセロスの門を叩きました。マセロスは、クララ・シューマンやヨハネス・ブラームスの直弟子であるカール・フリードベルクに学んだピアニストであり、グティエレスは偉大な音楽的伝統の系譜に連なる師事を受けることとなりました。

グティエレスが広く公にその才能を示す機会を得たのは、1966年のことです。当時、レナード・バーンスタインが指揮を務めることで名高かった「ヤング・ピープルズ・コンサート」に登場し、テレビ放映を通じて全米にその演奏を届けました。この記念すべきアメリカのテレビデビューで披露されたのは、ムソルグスキー作曲の組曲《展覧会の絵》でした。

1967年にはアメリカ合衆国の市民権を取得し、正式に帰化しました。師であるウィリアム・マセロスの門下生であったパトリシア・アッシャーと結婚し、アメリカを生活と演奏活動の確固たる拠点としています。

彼のキャリアにおいて、決定的な転機となったのは1970年の出来事です。モスクワで開催された権威あるチャイコフスキー国際コンクールで銀メダルを獲得したことにより、その名は瞬く間に世界中に知れ渡ることとなりました。この成功を機に、グティエレスは世界の主要なコンサートホールや音楽祭から次々と招聘され、その演奏は各地で熱狂的な旋風を巻き起こしました。以来、彼はクラシック音楽界の第一線で活躍を続け、数多くの著名な指揮者たちと共演を果たしています。共演した指揮者には、ヨーゼフ・クリップス、ユージン・オーマンディ、エーリヒ・ラインスドルフ、ユーリ・アーロノヴィチ、クラウス・テンシュテット、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、アンドレ・プレヴィン、ズービン・メータ、ロリン・マゼール、小澤征爾、ウラディミール・アシュケナージ、ダニエル・バレンボイム、クルト・マズア、ジェームズ・レヴァイン、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、クリストフ・エッシェンバッハ、アンドルー・デイヴィス、デイヴィッド・ジンマン、ジェラルド・シュワルツ、アンドルー・リットン、ワレリー・ゲルギエフなど、錚々たる顔ぶれが並びます。

グティエレスの演奏は、表現豊かなロマン派的な情熱と、形式を重んじる古典派的な均整感覚が見事に融合していることで特筆されます。この独特なスタイルの魅力により、彼は多くのピアノ音楽愛好家や批評家から、20世紀後半において最も偉大なピアニストの一人に数えられています。

演奏家としての活動に加え、グティエレスは後進の指導にも情熱を注いでいます。現在は、ニューヨークにあるマンハッタン音楽学校で教鞭を執り、若い音楽家たちの育成に貢献しています。

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