オリガ (キエフ大公妃)

聖オリガ：キエフ・ルーシの聖女

聖オリガ（生年不詳 - 969年7月11日）は、キエフ大公国の大公イーゴリ1世の妃であり、夫の死後、摂政としてキエフ・ルーシを統治した人物です。彼女はキリスト教に改宗し、ルーシにおける最初期の聖人として崇敬されています。本稿では、オリガの生涯、政治、宗教における功績について詳しく解説します。

生涯

オリガはプスコフ出身で、903年頃にイーゴリ1世と結婚しました。彼女の出自については、平民の娘とする説と貴族の娘とする説があります。『原初年代記』には879年生まれと記されていますが、息子の誕生年を考慮すると、この年代には疑問が残ります。945年にイーゴリ1世が暗殺されると、当時3歳であった息子スヴャトスラフ1世の摂政として、キエフ・ルーシを統治することになりました（945年 - 963年頃）。

復讐と改革

オリガは摂政として、夫を暗殺したデレヴリャーネ族に対して徹底的な復讐を行いました。その復讐は以下の4段階に及び、伝説的な色彩を帯びています。

1. デレヴリャーネ族がオリガに求婚の使者を送った際、船に乗せて運ぶように見せかけて穴に生き埋めにする。
2. デレヴリャーネ族の有力者を呼び寄せ、入浴後に浴室に閉じ込めて焼き殺す。
3. 夫の追悼式でデレヴリャーネ族に酒を振る舞い、酔いつぶれた5000人を斬殺する。
4. デレヴリャーネ族の本拠地イスコルステニを包囲し、鳩と雀に硫黄を付けて放ち、町を焼き討ちにする。

これらの復讐劇によって、デレヴリャーネ族の自治は失われました。オリガはその後、税制を改革し、貢税所を設置して徴税人を配置することで、中央集権化を進めました。この税制改革は「オリガの改革」として知られています。

キリスト教への改宗

オリガは945年または957年にコンスタンティノープルでキリスト教に改宗し、洗礼名ヘレナを授かりました。東ローマ帝国皇帝コンスタンティノス7世は、オリガを歓迎する儀式の記録を『儀式の書』に残しています。改宗の背景には、東ローマ帝国の支援と文化を取り入れるという政治的な動機があったと考えられています。オリガは東フランク王国のオットー1世にも接近し、ラテン教会の司教派遣を要請しましたが、これは偽りの申し出であったとも伝えられています。

晩年と聖人崇敬

スヴャトスラフ1世が成人すると、オリガは政治の表舞台から退きましたが、遠征中の息子に代わり、孫たちと共にキエフを治めました。969年にキエフで病没し、彼女はキリスト教をルーシに広めようとしましたが、息子は改宗を拒否しました。オリガの時代には、キリスト教への改宗は個人的なものでしたが、孫のウラジーミル1世の時代に大規模な改宗が行われました。オリガはルーシにおける最初期のキリスト教改宗者の一人として、亜使徒の称号を持つ聖人として崇敬されています。

オリガは、激しい復讐劇を行う一方で、税制改革を断行し、キリスト教を導入するなど、キエフ・ルーシの発展に大きく貢献しました。彼女の生涯は、政治的な駆け引きと宗教的な信念が交錯する、複雑で魅力的なものとして語り継がれています。

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