オルク・テムル (斉王)

オルク・テムルの生涯と影響

オルク・テムル（Ürüg Temür）は、生没年は不明ですが、モンゴル帝国の重要な人物です。彼はチンギス・カンの弟ジョチ・カサルの子孫として、モンゴルの皇族に名を連ねていました。漢文の史料『元史』では「月魯帖木児」として知られています。

カサル家とオルク・テムルの関係

オルク・テムルのルーツはカサル家にあります。この家の当主は、ジョチ・カサルの死後、イェグがその役割を引き継ぎます。その後、コルコスンを経て、イェスンゲとその息子シクドゥルが家の伝統を受け継いでいきました。しかし、シクドゥルはナヤンの反乱に加担し敗北したため、息子のバブシャが新たな当主となります。バブシャはクルク・カアン（武宗カイシャン）の即位時に「斉王」と呼ばれ、以降、カサル家の当主は「斉王」として知られるようになります。

オルク・テムルは『元史』によってバブシャの孫とされていますが、中には彼の息子と考える説もあります。

繁栄の時代と内戦

オルク・テムルが歴史の表舞台に登場するのは、イェスン・テムル・カアンの時代です。泰定3年（1326年）には斉王位を継承し、金印を授与されました。また、翌年には鈔二万錠が授与されています。

イェスン・テムルの死後、カアン位を巡って内戦が発生しました。この戦いは「天暦の内乱」と呼ばれ、元朝の多くの王族が二つの派閥に分かれて争いました。オルク・テムルは大都派に参加し、他の指導者と共にアリギバを包囲しました。彼らは上都を攻撃し、遼王トクトらを討ち取ることで大都派の勝利に貢献しました。

家族の事情とカサル家の変容

オルク・テムルは、カサル家が構成する東方三王家の一員でした。カサル家はオッチギン家やカチウン家と連携し、西方三王家に比べて政治的な一体感が強い集団でした。しかし、ナヤンの反乱を受け、この結束は弱まってしまいます。特に、カサル家の当主がオッチギン家の当主を討つという異例の事態は、この家の力が衰える一因とされています。

上都が陥落した後、オルク・テムルはアリギバがもっていた財宝をトク・テムルに捧げ、大都派の中心人物アラトナシリらと共に金500両、銀2500両、鈔10000錠という大きな報酬を受け取りました。

オルク・テムルの子孫

『元史』によれば、オルク・テムルの子孫の記録はありませんが、カサル家の系譜はここで終わっています。それでも、北元時代にホルチン部を支配したボルナイが「斉王」と名乗っていたことから、オルク・テムルの血を引いている可能性が高いとされています。

このように、オルク・テムルの生涯と家族の歴史は、モンゴル帝国の政治的な動乱と深い関わりを持っていました。彼の影響は後世のモンゴル史にも色濃く残り、彼が属したカサル家の歴史を知る上で欠かせない存在です。

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