オロナインH軟膏

オロナインH軟膏

オロナインH軟膏は、大塚製薬が製造・販売している皮膚用抗菌軟膏剤（第2類医薬品）です。この製品は、その長い歴史と幅広い効能から、多くの家庭で常備薬として親しまれています。

歴史

オロナインのルーツは、アメリカの製薬会社オロナイトケミカルが製造した殺菌消毒剤にあります。この消毒剤は、三井物産を通じて大塚製薬に紹介され、当時の社長であった大塚正士が軟膏として販売することを決断しました。当時、ペニシリン軟膏やメンソレータムといった大衆薬が人気を集めており、大塚製薬は新たな市場に参入することを目指しました。

1952年、徳島大学の教授たちの協力のもと、オロナイン軟膏が完成し、翌1953年に販売が開始されました。商品名の「オロナイン」は、オロナイトの社名に由来しており、後に発売された炭酸飲料「オロナミンCドリンク」のブランド名のヒントにもなりました。オロナインH軟膏は、オロナミンCドリンクとともに、大塚グループを代表する製品の一つとなっています。

当初は「オロナイン軟膏」という名称でしたが、1969年に「オロナインD軟膏」に変更され、1972年に現在の「オロナインH軟膏」となりました。この「H」は、軟膏の成分であるヘキシジンに由来しています。パッケージは発売当初からほとんど変わっていませんが、これは「長年愛用している顧客が混乱しないように」という大塚製薬のこだわりを示しています。発売当初は宣伝カーを使ったキャンペーンで人気を集めましたが、一時的に臭いが問題視され売り上げが伸び悩みました。しかし、その後、子供向けの試供品配布や品質改良によって売り上げを再び伸ばしました。

大塚製薬のロゴは2007年に変更されましたが、オロナインH軟膏のパッケージには旧ロゴが今も使われています。2015年には、チューブ容器が金属製からラミネートチューブに変更されました。

広告活動

オロナインH軟膏の初代広告キャラクターには、映画『君の名は』で共演した佐田啓二と岸恵子が起用され、「君の名はオロナイン」というキャッチコピーが使われました。また、大村崑が主演したテレビ番組『頓馬天狗』では、劇中にオロナインの生CMが挿入され、知名度を上げました。大村崑の劇中での役名は、商品名をもじった「尾呂内南公（おろない なんこう）」でした。

テレビCMには、松山容子、浪花千栄子、香山美子、名取裕子、純名里沙といった女性タレントが起用されました。特に、名取裕子が担当したCMのキャッチコピー「日本の手は知っています。」は、長きにわたり使用されました。1960年代中期からは、ホーロー看板での宣伝活動も行われました。

長年、パッケージの「H」に「エッチ」とカナが振られていましたが、1990年代に入ってカナ表示がなくなり、広告でも「エイチ」と発音されるようになりました。

2003年には、発売50周年を記念してスプレータイプの消毒液「オロナイン液」が発売されました。オロナイン液のCMでは、アニメキャラクターが起用されています。2009年以降は、「働く手をほめよう」というキャッチフレーズでドキュメンタリー風のCMが放送されています。

成分

オロナインH軟膏の主成分は、消毒薬であるグルコン酸クロルヘキシジン液です。その他に、止血薬のラウロマクロゴール、乳化剤のポリソルベート80、止血薬の硫酸アルミニウムカリウム（ミョウバン）が含まれています。

過去には、オロナイン軟膏の長期使用によって皮膚症状が現れる「オロナイン皮膚症」が問題となりました。これは、当時の軟膏基剤に含まれていた陽イオン界面活性剤の脱脂作用が原因であることが判明し、現在のオロナインH軟膏では基剤が改良されています。

効果・効能と注意点

オロナインH軟膏は、ニキビ、吹き出物、軽いやけど、しもやけ、ひび、あかぎれ、外傷、水虫、たむし、しらくもなど、様々な皮膚のトラブルに効果があります。殺菌消毒作用を持つ主成分が、熱傷・外傷や細菌・真菌感染症に効果を発揮します。

ただし、湿疹、皮膚炎、虫刺されには使用を控えるべきです。また、化粧下地としての使用も推奨されていません。重度のやけどや凍傷、ジュクジュクした水虫には使用できません。

副作用

オロナインH軟膏には、発疹、赤み、かゆみ、腫れなどの副作用が報告されています。また、2017年には、ショック（アナフィラキシー）が新たに副作用として追加されました。使用する際には、これらの点に注意が必要です。

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