オン・スルー・ザ・ナイト

デフ・レパードの原点『オン・スルー・ザ・ナイト』

『オン・スルー・ザ・ナイト』（On Through the Night）は、1980年にデフ・レパードが発表した初のスタジオ・アルバムです。このアルバムは、彼らの音楽キャリアの出発点であり、後の世界的な成功への足がかりとなりました。

制作の背景

1978年11月、デフ・レパードはドラマーのフランク・ヌーンを迎えて自主制作EP「The Def Leppard EP」を録音。その後、リック・アレンが加入し、初期のラインナップが確立しました。アルバムには、このEPに収録されていた「ロックス・オフ」と「ハード・ロック・ヒーロー宣言」が再録音されています。1979年には、ニック・タウバーのプロデュースによるメジャー・デビュー・シングル「ウェイステッド」をリリースし、注目を集めました。

アルバムのプロデューサーには、当初チャス・チャンドラーやロイ・ウッドも候補に挙がっていましたが、最終的にはジューダス・プリーストなどを手掛けたトム・アロムが起用されました。ただし、「ロック・ブリゲード」にはタウバーがプロデュースしたバージョンも存在し、後にボックス・セット『アーリー・イヤーズ79-81』で発表されています。アロムは、プロデュース以前にAC/DC|AC_DCのオープニングアクトを務めるバンドのステージを見て、「彼らは魅力的で若々しく、活気に満ち、演奏は手堅かった」と語り、彼らの才能に感銘を受けたと述べています。

「ハロー・アメリカ」は、アメリカのテレビドラマに映っていたロサンゼルスのヤシの街路樹からインスピレーションを得て作られました。ジョー・エリオットによれば、ドラマは『刑事コジャック』または『刑事スタスキー&ハッチ』だったとのことです。「ブリティッシュ神話の果てに」の冒頭のスポークン・ワードは、ライブやデモ・レコーディングではエリオット自身が担当していましたが、アルバムではゲストのデイヴ・カズンズ（ストローブス）が担当。カズンズは、名優ローレンス・オリヴィエを意識して録音に臨んだそうです。

次作『ハイ&ドライ』（1981年）には、本作と同名の「オン・スルー・ザ・ナイト」が収録されていますが、これは本作制作時のアウトテイクではなく、全く新しい楽曲です。エリオットは後に、「1枚のアルバムに2つの表題曲があるようなものだ」とコメントしています。

反響と評価

デビュー・シングル「ウェイステッド」は、全英シングルチャートで61位を記録。「ハロー・アメリカ」は45位に達しました。アルバム自体は全英アルバムチャートで15位を記録し、合計8週間トップ100入りを果たしました。

アメリカでは1980年にBillboard 200で51位に達し、その後も売り上げを伸ばし、1989年5月にはRIAAによってプラチナ・ディスクに認定されています。

オールミュージックのスティーヴ・ヒューイは、5点満点中3.5点を付け、「彼らの後の作品と比べると、緻密な音作りもポップ色の強いソングライティングもないが、間違いなく彼らの作品の中でも特にヘヴィで、バンドのファンの一部は、こうしたサウンドを好んでいる」と評しました。

収録曲

Rock Brigade
Hello America
When the Walls Came Tumbling Down
Wasted
Rocks Off
It Could Be You
Satellite
Too Late for Love
Comin' Under Fire
Overture

参加ミュージシャン

ジョー・エリオット - ボーカル、バッキング・ボーカル
スティーヴ・クラーク - ギター、バッキング・ボーカル
ピート・ウィリス - ギター、バッキング・ボーカル
リック・サヴェージ - ベース、バッキング・ボーカル
リック・アレン - ドラムス、バッキング・ボーカル

アディショナル・ミュージシャン

クリス・M・ヒューズ - [シンセサイザー]
* デイヴ・カズンズ - ボイス(on #6)

『オン・スルー・ザ・ナイト』は、デフ・レパードの原点であり、彼らの音楽的な進化を辿る上で欠かせない作品です。初期の勢いとエネルギーが詰まったこのアルバムは、ハードロックファンにとって必聴の一枚と言えるでしょう。

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